2006年9月8日(金)「しんぶん赤旗」

米の軍事偏重戦略 テロ対処を困難に

英・国際戦略研が報告


 【ロンドン=岡崎衆史】英国の国際戦略研究所(IISS)が五日に発表した「二〇〇六年版戦略概観」は、ブッシュ政権による軍事偏重の「対テロ戦争」戦略が過激主義を拡大した上、他の各国との不和を生み出し、テロへの共同の対処を困難にしてきたと指摘しました。


 報告書は、「米国は対テロ戦争なるものを主に軍事的手段で追求し、過激主義の炎を拡大した」として、対テロ戦争の名の下で行われたイラク戦争やキューバ・グアンタナモやイラク・アブグレイブの収容所での収容者虐待が米国への敵意を増し、世界に過激主義を広げたと指摘。米国の対テロ戦争が過激主義に勝利できるかは「明確でない」と結論付けました。

 また、イラク戦争と収容者虐待などが「多くの人々に、米国の横暴さ、国際法と世界の規範に対する無視を強く意識させた」とし、「ブッシュ政権の(対テロ)政策は、控えめにいっても(テロ対策への)関心をそらす役割を果たし、テロに対処する効果的な共同行動を台無しにした」と強調しました。

 イラクの状況については、「イラク人同士や武装勢力の攻撃で多数の死者がで、外国軍もイラク軍も対処できない状況の中、紛争は悪化している」と述べ、治安がよくなるどころかむしろ悪化していることを明らかにしました。

 報告書はまた、インターネットの宣伝力が、イラク戦争に世界中のイスラム教徒をひきつけていると指摘。テロに対する断固とした対応は必要だとしながらも、「極端な場合、より攻撃的な軍事行動はこの傾向を拡大する」と述べ、イラクでの軍事力行使がインターネットの宣伝を通じて怒りを招き、多くのイスラム教徒の参戦を招き、さらに紛争を悪化させる可能性があると警告しました。

 イランの核問題などで第二期ブッシュ政権が欧州などとの協調を重視していることについては、「主流派の共和党上院議員から非難を受ける中、第一期の単独行動主義や新保守主義から距離を置く以外に選択肢がなかった」と分析しました。

 一方、ロンドン同時テロなど欧州でのテロ事件について、報告は「欧州のイスラム教徒テロリストは国内で養成されたものだ」と強調。「社会的、経済的、政治的な排除によって、多くの欧州諸国では、イスラム教徒の不平を増幅している」として、少数派のイスラム教徒を排除する欧州の社会制度に問題があるとの見方を示しました。


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