2006年9月6日(水)「しんぶん赤旗」
主張
軍事費概算要求
ねらいは米世界戦略の後押し
防衛庁の二〇〇七年度概算要求は、四兆八千六百三十六億円で今年度予算を七百三十億円上回ります。偵察衛星などをふくめると四兆九千五百億円にもなります。
概算要求は、「世界の中の日米同盟」の日米合意にもとづき、在日米軍を再編・強化し、自衛隊の海外作戦能力をつよめるものです。
生活関連予算を削り国民を苦しめながら、血税をアメリカの先制攻撃戦略への加担・強化のために使うことを許すわけにはいきません。
国際紛争介入の備え
小泉首相は六月の日米会談で、先制攻撃戦争のさいの日米共同態勢や米軍と自衛隊の一体化をめざす日米合意を「完全かつ迅速に実施」すると約束しました。概算要求の中心的ねらいはこの対米約束の実施です。
それを象徴するのは米軍再編のための予算です。米軍再編は日本をアメリカの先制攻撃戦略の足場にするものであり、反対の声が広がっています。民意無視の予算計上には道理がありません。
沖縄のキャンプ・シュワブ(名護市)での新基地建設には、名護市民はもちろん県民の七割が反対しています。沖縄県知事は日米両政府のV字案は認めないといい、名護市長も千八百メートル滑走路は認めないといっています。これらを無視した調査費の計上などとんでもないことです。
厚木基地の艦載機部隊の岩国基地移駐には、岩国市民と市長が一体となって反対しています。市長が住民の意思にもとづき反対しているのに防衛庁が調査を強行しようとするのは、憲法が保障する地方自治の原則を正面からふみにじる暴挙です。
総額二千百九十億円もの予算をつぎこむ弾道ミサイル防衛も、アメリカの先制攻撃戦略の柱です。北朝鮮の弾道ミサイル発射を好機とばかりに、イージス艦搭載のSM3ミサイルや陸上基地配備のPAC3ミサイルをアメリカから買い込み、性能強化型の迎撃ミサイルの研究開発をすすめようとしています。
このミサイル防衛網は、反撃を封じ込めながら、アメリカが安心して先制攻撃するためのものです。システムは防御的でも攻撃作戦の一環です。集団的自衛権の行使も重大問題です。防衛網に対抗する攻撃力の開発など軍拡競争をうみだしかねないミサイル防衛の推進は世界の平和を脅かします。
「国際平和協力活動」を旗印にすすめる自衛隊の海外派兵態勢づくりの加速は重大です。イラク戦争などのアメリカの先制攻撃戦争に参加し米軍と共同する実行部隊である「中央即応連隊」(約七百人)を陸上自衛隊宇都宮駐屯地に創設します。
海外の戦場で目標を偵察するための「滞空型無人機」の調査・研究や米軍がイラク戦争で掃討作戦に使っているストライカーと同種の「機動戦闘車」の開発もめざします。
概算要求がめざすのは、アメリカの軍事戦略を後押しし、海外でたたかう軍事態勢づくりです。平和を求める国民の願いに反する予算措置には反対です。
九条守れの声大きく
概算要求は、従来政府がとってきた「日本防衛」の建前を後景においやり、日米共同で国際紛争に介入する道を本格的につきすすもうとしています。戦争放棄、戦力不保持、交戦権否定の憲法をないがしろにする態度です。日米軍事同盟を強化すればアジアも世界も日本になびくと思ったら大間違いです。
憲法九条守れの声を大きくすることがいっそう重要となっています。