2006年9月2日(土)「しんぶん赤旗」

光洋シーリング 請負労働者59人

直接雇用かちとった


 全日本金属情報機器労働組合(JMIU)は一日、徳島県庁で記者会見し、トヨタ系自動車部品メーカーの光洋シーリングテクノ(徳島県藍住町)で請負の形で働かされていた五十九人が、同社に直接雇用されることを明らかにしました。会見には、山本善五郎副委員長、同徳島地域支部に加入してたたかってきた同社で働く矢部浩史さん(41)ら四人が出席しました。


 JMIUは、八月五日に県が提供した協議の場で(1)「偽装請負」の解消のために、対象労働者を「期間契約社員」として直接雇用する(2)別に、経験年数順に三十人を直接雇用する(3)今回採用する期間契約社員は原則六カ月の雇用契約とし、一定期間と基準により正社員への登用を行う(4)これらにあたって、労働組合の所属や活動によって不利益扱いをしない―ことで会社側と合意しました。

 合意に基づき、徳島労働局指導の対象となる労働者二十九人、経験年数の長い労働者三十人が直接雇用に、また正社員が指揮・命令を行う部署の労働者二十九人が請負から「派遣」契約に切り替わります。

 山本氏は「今回の直接雇用は、勇気を持って立ち上がった若い労働者がかちとった画期的な成果であり、この前進は全国で同じ境遇にある労働者を大いに励ますものです」と指摘しました。

 矢部さんは「非正規労働者の三分の二、組合内でも半数以上がまだ『請負』労働者のままです。偽装請負がまん延するこんな社会に未来はありません。若い労働者が『他人の会社のため』じゃなく『自分の会社のため』に働ける環境がつくられるよう引き続き今後もたたかっていきたい」と話しています。


解説

偽装是正の突破口

 光洋での直接雇用の実現は、労働組合をつくり、勇気をもって偽装請負を告発した青年らのたたかいと支援の力が切り開きました。製造現場にまん延する違法な働かせ方を是正する突破口となるものです。

 松下プラズマディスプレイ、キヤノン大分でも是正の動きとなっています。

 いま偽装請負のような違法労働が製造現場で横行しています。東京労働局の〇四年度の調査では、労働者派遣事業所七百十一事業所のうち、五百七十七事業所(81・2%)で違法状態がありました。

 光洋で偽装請負として働かされていた青年たちは、正社員と同じ仕事をこなす技術を持ちながら、年収は二百万円前後と半分以下でした。こうした劣悪な労働条件は「ワーキングプア」の広がりとして社会問題になっています。

 青年たちが直接雇用を求めて労働組合をつくったのは二年前。会社は、団体交渉すら拒みました。労働者を守るべき労働局も、違法派遣であると認定しなから、「適正な請負にする」との会社側のいい分にそった指導に終始し、直接雇用に背を向けてきました。

 これに屈しない青年たちと全労連をはじめ広範な労組・団体と、日本共産党国会議員団の現地調査をふまえた度重なる国会質問などの支援が直接雇用の道を開きました。(酒井慎太郎)


 偽装請負 派遣労働者は派遣会社と契約を結び、実際の労働は派遣先企業でその指揮のもとに行います。製造現場にも派遣労働が解禁され、期間は二〇〇七年二月末までは一年を超えてはならないとしています(それ以降は三年)。期間を超えた場合、派遣先企業は直接雇用の責任を負います。これを免れようと、実態は派遣なのに請負という形をとって働かせる脱法行為が偽装請負です。本来の請負は、仕事を請け負った業者がその責任で成し遂げ、納品します。契約の形式が請負契約であっても、契約者の指揮で働かせれば違法となります。

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