2006年9月1日(金)「しんぶん赤旗」
軍事費の概算要求
米軍再編 強行の姿勢
費用明示せず「計画は実行」
“海外派兵型”へ態勢づくり
防衛庁が三十一日に決定した軍事費(防衛関係費)の概算要求は、在日米軍再編をあくまで強行する姿勢を示したものであり、重大です。
住民の反対無視
米軍キャンプ・シュワブ沿岸部(沖縄県)への新基地建設、米軍岩国基地(山口県)への米空母艦載機移駐、米軍キャンプ座間(神奈川県)への米軍と自衛隊の新司令部設置など、在日米軍再編計画に周辺自治体や住民は強く反対しています。
ところが防衛庁は、在日米軍再編の日米合意を「的確かつ迅速に実施する」とした閣議決定(五月)を受け、「可能な限り早期に(再編計画を)実現することが重要」として、各計画の多くについて金額を明らかにしないまま、「調査費」など費目だけを計上しました。
“どれだけの費用になるか分からないが、とにかく計画は実行する”という姿勢です。自治体・住民の切実な声を真っ向から踏みにじる強引な姿勢に対し、批判が強まることは避けられません。
軍事協力を強化
今回の概算要求には、在日米軍再編に基づく基地強化経費だけでなく、米軍の海外での戦争に加担するため、自衛隊を海外派兵型軍隊に転換させるための費用も盛り込まれています。
その一つは、「国際平和協力活動等に迅速に対処する」ためとして陸上自衛隊「中央即応連隊」(約七百人)を、栃木県の宇都宮駐屯地に創設することです。海外派兵について一元的に指揮・計画・訓練を行う中央即応集団司令部のもとに置く計画です。
同司令部については、今回の概算要求で、朝霞駐屯地(東京都・埼玉県)から、米陸軍新司令部が置かれるキャンプ座間(神奈川県)への移設費(調査費)が計上されています。「中央即応連隊」創設とあわせ、自衛隊が海外で米軍と共同作戦を展開するための態勢づくりです。
陸・海・空の各自衛隊の運用を一元的に行う統合幕僚監部は、海外派兵のための「国際平和協力演習」(指揮所演習)を実施する計画です。航空自衛隊は、「国際平和協力活動に係る教育訓練等の推進」を目的にした「国外緊急任務対処訓練」も行うことを盛り込んでいます。
〇七年度に防衛施設庁を解体し防衛庁に統合するための経費も計上しました。これに伴う組織再編として、防衛政策を担う防衛庁の中枢・防衛政策局に、「日米防衛協力課」を新設することを求めています。米軍と自衛隊による軍事協力を強化する態勢づくりの一環です。
また先制攻撃戦略の柱とブッシュ米政権が位置づけている「ミサイル防衛」では、イージス艦に搭載する海上発射型迎撃ミサイルSM3と、地上発射型の迎撃ミサイルPAC3を調達。このほか、次世代の海上発射型迎撃ミサイルについての日米共同開発などのために、二百四十七億円も計上しています。
ムダ遣いは継続
米ソ対決時代に想定していた大規模着上陸作戦対処のための装備調達も、続いています。
対艦攻撃などを任務とするF2戦闘機については、十機(千二百六十五億円)を要求。〇六年度に比べ二倍の調達量です。防衛庁は、〇八年度分も合わせた二年分を一括取得することで経費が節減できると説明しています。しかし、「節約」を口実に旧来型装備の大量調達を求めても、国民の理解が得られるものではありません。
また90式戦車も、〇六年度より二両減ったものの、九両(七十一億円)の調達を求めています。