2006年8月28日(月)「しんぶん赤旗」
選別やめさせ雇用延長
60歳迎える沖電気労働者
法は“希望者全員”
改正高年齢者雇用安定法によって今年四月から六十五歳までの段階的な雇用延長がすべての企業に義務付けられました。「希望者全員」という法改正の趣旨に反する選別採用が問題になっていますが、それをはね返し、雇用延長をかちとった労働者がいます。(中村隆典)
沖電気工業(本社東京、従業員約五千五百人)の本庄工場(埼玉県)に勤務するKさんです。Kさんは、今年六十歳を迎えるため五月、雇用延長を申し入れました。ところが会社側は「再雇用の基準に照らして問題がある」として拒否してきたのです。
会社は再雇用の対象者として次の四つの基準を設けていました。(1)就労を希望し働く意欲がある者(2)業務上の関係者・上司・同僚と協調・協力して働くことができる者(3)業務遂行に心身とも問題がないこと(4)グレード(資格等級)が「3以上」の者―です。
会社側はKさんは、「働く意欲がみられない」「協調性がない」「グレード3以上ではない」ことを挙げ、再雇用だけでなく他の企業への紹介あっせんも一切おこなわないという回答をしてきました。
Kさんは、「希望者全員の継続雇用」という法の趣旨に反する選別的基準だと抗議。自身がグレード2と資格等級が低いのは指名解雇撤回闘争(別項)による復職後の、差別的な賃金・処遇の結果だとして、今すぐ昇格するよう求めました。
労働組合に対しても、「希望者全員の雇用継続が前提」と組合員に説明してきたのだからと、雇用継続が実現できるように会社側と交渉するよう求めました。組合側はKさんの主張をきちんと会社側に伝えることを約束しました。
「組合には、雇用延長制度の検討段階から、希望者全員が沖電気本体に再雇用される内容にするよう強く求めてきました。グレードの高い人もそうでない人も等しく年金の支給開始年齢が引き上げられる。希望者全員という法の趣旨からいって差別的な扱いがあってはならないからです」とKさんは話します。
職場内にとどまらず、電機の職場で働く労働者の交流組織である電機労働者懇談会の厚生労働省への要請行動にも参加し、担当官に沖電気への適切な指導を求めました。
埼玉労働局や本庄市のハローワーク、本社のある品川ハローワークにも電機懇や地域労組の仲間とともに要請しました。
品川ハローワークでは指導官から「基準に問題がないかどうかを会社に問いただしたい」との回答を得ました。
六月中旬。「再雇用する」と、組合を通じてKさんの元に朗報がもたらされました。雇用延長を拒否されてから約二週間後のことでした。
「会社や組合と理を尽くして話し合いを重ねながら、ハローワークなど行政機関にも要請したことが、会社のかたくなな姿勢を変えさせる結果につながったと思います。これを契機に、希望すれば誰もが六十歳以降も働き続けられる職場になってほしいと思います」とKさん。
Kさんの再雇用が決まってから、表立って選別的基準に異議を唱えることのなかった職場の同僚からも、「おめでとう」「よかった」の声が寄せられました。
四十代の女性社員は次のように話します。
「法律で義務付けられているのに、何で適用されないんだと思っていました。年金は六十五歳にならないと支給されなくなるし、仕事もないんじゃ、生活ができません。Kさんの勇気が次に続く多くの社員を励ましていると思います」
指名解雇撤回闘争 沖電気は一九七八年に「経営危機」などを理由に従業員の約一割にあたる千三百五十人の希望退職を募集。予定数に足りないとして二百八十六人の指名解雇を強行しました。屈しなかった七十一人の八年余に及ぶ解雇撤回闘争によって勝利和解しました。三十五人が職場復帰し、Kさんはその一人です。