2006年8月27日(日)「しんぶん赤旗」

シリーズ 職場

成果主義を追って

記者が語る実態(下)

声上げれば展望見える


 ――たたかいの確信、展望をどう見ますか。

 畠山 会社の度の過ぎたもうけ主義と労働者の矛盾が広がっていますから、当たり前の声を上げれば職場を変える展望が見えてきていると感じています。

 日立製作所の旧清水工場で一人の労働者が、中高年がひどい賃下げになる成果主義賃金に反対して二年にわたってたたかい、改善をかちとりました。会社は難解な資料を出し、連合の組合はまともに説明しない。それを彼が詳しく読み解いて、分かりやすいビラをつくって職場で宣伝した。全国の日立関連企業で働く労働者有志の団体「日立懇」の仲間や全労連の地域労組の協力も得て要請や宣伝行動をかさねて、ついに労使協議で賃下げ分の補てんを定年まで保障させることになったんです。

全体に広げ

 ――労働者も声をあげたんですか。

 畠山 ひどい中身だと知った何人もの労働者が、組合に意見を言ったり、苦情処理の申し入れをしたり、いろいろな動きがおこったそうです。一人でもおかしいと声を上げる人がいれば、職場を変えていける展望があることを示したと思います。

 桜江 大阪では、教職員組合が、成果主義が教育の現場になじまないという思いを職場全体に広げる努力をしていました。これは校長とも一致がかちとれるし、運動も広がっています。

 たとえば個人に目標をもたせて競わせるというやり方にたいし、組合ががんばって、職員同士が共同の目標を話し合って、それを個人の目標にさせるとか、情報開示とか、害悪を骨抜きしていくたたかいもある。

 ――共同の目標を個人目標にするんですか。

 桜江 ええ。教育現場への成果主義の導入は、教師の目が子どもに向かなくなるという深刻な問題があります。教育基本法改悪とあわせた職場支配がつよまって、教師間の共同が失われて教育が成り立たなくなるという不安が学校関係者に広がっています。教師は、自分が教師になった思いとかけ離れた働き方になっていると悩んでいます。

 ですから、いい教育がしたいという思いを一致させる努力をしながら、お互いよりよい職場とはどういうことなのかを考える。バラバラにさせないためのたたかいですよね。

 病院でも、集団共同目標のような形でバラバラにしないように工夫した「私たちが考える評価制度案」を日本医労連の組合が提起して、それをもとに経営側と話し合いをしようと運動しているところもあるんです。

 山田 私はJMIU(全日本金属情報機器労働組合)の組合がある会社を二つ取材しましたが、全労連加盟の組合は少数でも会社を動かしています。横河電機では情報開示をさせる。日本IBMでは、労働組合が抗議すれば退職強要がピタリと止まる。裁量労働制でも違法な適用をやめさせるなどの成果をあげています。労働者の要求を掲げてちゃんとたたかえば切り開けることを実感しました。ここでは組合の機関紙「かいな」を机上配布しています。なにかあったら労働組合に相談するんだという意識が非組合員の間でもかなりある。

労組の存在

 畠山 若い労働者の話を聞くと、孤独で山のような仕事につぶされそうになりながらひたすら働いて、こんな会社で将来あるんだろうかと、もんもんとした日々を送っているんです。そういう若手や中堅労働者にとって、当たり前のスタンスで自分たちの思いを代弁してくれる人たちがいるというのは、職場に希望をもつことになるんですね。たたかわない労働組合を変える力にもなる。

 桜江 職場にたたかう労働組合があるところでは、ほんとにがんばって成果主義の害悪をくい止めています。労働組合の役割は大きいですよね。

 中村 本来、労働組合が企業と堂々とわたりあって労働者の権利、生活を守るという立場でやっていくことが、日本経済をいい状態にしてゆくことにつながると思うんですよね。

 ――ありがとうございました。職場取材チームはこのあと労働者の状態悪化のもう一つの重要なテーマであり、大きな社会問題にもなっている派遣・請負労働などの非正規雇用問題をとりあげる予定です。(おわり)

 (「シリーズ職場 成果主義を追って」の取材は、桜江靖雄、中村隆典、畠山かほる、安川崇、山田俊英の各記者が担当しました)


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