2006年8月22日(火)「しんぶん赤旗」
鹿児島の豪雨 なぜ大災害に?
堤防整備まだ6割台
「国の怠慢、人災だ」の批判も
「なぜこんな大災害になったのか」「災害を未然に防止するすべはなかったのか。その原因はどこにあるのか」。鹿児島県北部豪雨災害からほぼ一カ月たった今も、被災者からもれる憤りの声です。国の資料を探ると「小泉人災」ともいうべき事実がうかんできます。(鹿児島・村山智)
その資料とは、国土交通省九州地方整備局川内川河川事務所が二〇〇六年に発行したリーフレット「川内河川事業概要2006」です。一九七〇年以降の十四回の災害状況を詳しく紹介したうえで、「堤防整備率は64%とまだ低い」とのべています。
今回の豪雨災害で、家屋の全半壊九百四十四、浸水家屋二千二百十七という甚大な被害のなかでも、家屋の全半懐した地域の99%が川内川流域に集中しています。
川内川は、九州屈指の大河川、一級河川として国が治水対策の全責任を負っています。その「全責任」を負うべき国の堤防整備は六割台というお寒い状況を認めているのです。
金ないからと地方切り捨て
同河川事務所が〇四年に発行した「検証・床上浸水対策事業の効果」と題した別のリーフレットでは「浸水対策が実施されたところでは、河川のはんらんを未然に防止した」と写真入りで紹介しています。
今回の豪雨で全半壊、浸水家屋は、ほとんど堤防などが未整備の地域でした。
「なぜ、これほど改修工事が遅れるのか」との記者の質問に、国交省川内川河川事務所の後藤雅弘副所長は、「(国に)お金がないから」と答えました。
実際、浸水対策にかける予算は、二〇〇〇年度には百二十億円あった改修事業費が、〇六年度には三十三億円に激減しています(グラフ)。
小泉政治の地方切り捨てのもとで削減された改修事業費。二〇〇〇年度並みの改修予算があって堤防整備がすすんでいたらという思いが、こみあげました。
川内川の河川改修は、流域住民にとって悲願であり最重要課題でした。
県知事と関係自治体の各首長を役員に「川内川改修促進期成会」を一九七七年に結成。以来毎年度、住民の声をもとに薩摩川内市、さつま町、大口市、菱刈町、湧水町、えびの市の六自治体が結束し、国土交通省(建設省)や川内川河川事務所に危険個所の改修を要望してきました。
悲しむ被災者個人では限界
湧水町は、チッソが発電のために水路をせき止めた阿波井堰(せき)の開削を、大口市は、曽木の滝狭窄(きょうさく)部改修のための分水路の早期着工などを求めてきました。いずれも今回の大災害の主な原因となったところです。
濁流にのまれ四五度に傾いた家屋を前に「個人の力では限界です」と途方にくれる人や、「こんなあわれな生活はない」と避難所で怒り悲しむ被災者もいました。
「天災だけではない。国の怠慢による人災だ」「甚大な災害の犠牲から教訓を引き出し、川内川全体の抜本改修に取り組んでほしい」。この被災各地で聞いた住民と自治体担当者の声に、国は今こそ真摯(しんし)に応えるべきです。
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