2006年8月21日(月)「しんぶん赤旗」

ヒズボラの武装解除カギ

イスラエルの攻撃招いた挑発

レバノン


 十四日の停戦後、国連安保理決議に基づき、レバノン軍と国連レバノン暫定軍(UNIFIL)が紛争再燃を回避するための緩衝地帯創設にむけて動き出しています。決議はレバノン政府軍以外の全武装勢力の武装解除も求めています。地域の安定化のためにイスラム教シーア派民兵組織ヒズボラの武装解除が今後の課題になっています。(カイロ=松本眞志)


 ヒズボラは停戦順守の姿勢を示しながらも決議を「不公平かつ不公正」だとして、武装解除の要求を拒否。レバノンのムル国防相も「武装解除を論議する時期ではない」と語りました。

 一方、シニオラ首相は「政府軍以外の武器保有は認められない」と発言し、サルキス観光相も「ヒズボラのレバノン南部からの撤退と武装解除を要求する」と述べるなど意見の対立が表面化しています。

無法の口実に

 今回の紛争は、ヒズボラが国境を越えてイスラエル軍を急襲し、二人の兵士を拉致したことに始まり、イスラエルは報復措置として一般市民を標的とし攻撃を全土に拡大しました。

 特徴的なのは、中東地域を中心に、イスラエルの無法で過度の攻撃に反対する声がヒズボラ支持に傾いたことです。

 紛争後の七月十八日、アラブ連盟主催の外相会議では、ヒズボラの評価をめぐって意見が分かれました。当初、サウジアラビアやエジプト、ヨルダンなどは、ヒズボラの挑発行為を認めないとする立場でしたが、イスラエルの無法な攻撃がエスカレートするにつれ、ヒズボラ批判に口を閉ざすようになりました。

 レバノン国民のあいだでも、ヒズボラに対する支持が高まりました。紛争直後、キリスト教マロン派住民のなかに、「イスラエルのレバノン侵略の口実を与えるから、ヒズボラの軍事行動を支持しない」との声も聞かれましたが、レバノン全土に攻撃が拡大するなかで世論が変化しました。

 レバノン英字紙デーリー・スター七月二十九日付は「キリスト教徒の80%が、ヒズボラがすすめるイスラエルへの抵抗を支持している」と報じています。イスラム教スンニ派グループも、レバノン南部でヒズボラと連帯して戦闘に参加したことが伝えられています。

市民を犠牲に

 しかし、ヒズボラの今回の軍事作戦は、イスラエルの獄中にいるパレスチナ人やレバノン人捕虜の釈放を目的としたもので、直接にはレバノンの国益の問題とは性格を異にします。紛争開始後、「戦争の準備はできている」とナスララ師は発言しましたが、陣地戦にイスラエル軍を引きずり込み、同軍に多大な犠牲を強いて捕虜交換の交渉に持ち込む戦略は、結果として多くのレバノン国民を犠牲にしました。

 イスラエル北部を中心に行ったロケット砲攻撃も無差別にイスラエル市民を標的にしたものでした。世界の著名な裁判官、法律家、法学者でつくる国際法律家委員会は、七月二十一日にイスラエルとヒズボラ双方が戦争犯罪行為を行っているとの声明を発表。ヒズボラのロケット砲攻撃を、戦時における民間人の保護を定めたジュネーブ条約に違反すると非難しています。

 ヒズボラの行為は、イスラエルや米国が主張してきた「自衛権」に一定の根拠を持たせ、イスラエルの無法な攻撃を助長する役割を果たしたともいえます。


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