2006年8月19日(土)「しんぶん赤旗」
思想差別のない職場にしたい
石播労働者が政府要請
笠井議員が同席 「会社を呼んで調査を」
石川島播磨による思想差別の是正を求めている「人権回復を求める石川島播磨連絡会」は十八日、国会内で厚生労働省にたいして、日本共産党員やその支持者とみなした労働者にたいする思想差別の実態を示す新文書「〇の人事考課・昇進管理方針(案)」を示して、実態調査と差別是正の指導を要請しました。
呉(広島)、相生(兵庫)、愛知、横浜、東京など各地の事業所から約百五十人が参加。あらかじめ定年までの昇進の上限を決めていた新資料の存在に怒りの声をあげました。数十年にわたって賃金・昇進差別のみならず、職場の行事からも徹底的に排除されてきた思想差別の実態を生々しく語り、告発しました。
横浜工場の田吹矩行さん(63)は中学卒業後、石播の養成工となり、定年まで四十五年働いてきました。自衛艦の保温材のアスベストを吸い込み、胸膜皮厚斑になり、胸膜中皮腫というがんになる危険性を抱えています。
「それこそ命がけで働いてきた者に対して、会社はあらゆる差別をしてきた。仕事では誰にも負けないとがんばってきたが、会社側は初めから評価する意思のないことを知って激しい憤りがわいてくる」と訴えました。
また、来年定年を迎えるという男性労働者は「私の昇級は異常に遅く、四十歳のときに専門職二級に格付けされて以降、十九年間も据え置かれたままだ」とのべ、新資料がそれを裏付けていると報告しました。
同席した日本共産党の笠井亮衆院議員は「新資料の内容は本当にひどい。意図的、系統的、組織的なものであり、明らかに憲法、労基法三条違反の決定的な証拠というべきものだ」と指摘。
東京労働局などの「受けた差別が判然としない」「該当者の範囲が特定が困難」などという言い分はまったく通用しないと批判しました。
同会事務局責任者の渡辺鋼さんは「会社を呼んで新資料について調査してもらいたい」と要請。同省労働基準局の担当者は「新資料は各地の労基署に届け、状況を把握したい」と答えました。
本社前で抗議
これに先だって連絡会は石播本社前で社員の出勤時にあわせて宣伝。労働者が次々とマイクをにぎり、「会社は謝罪し誠意を示せ」と訴えました。
“職場八分”に/20年間の賃金損害3700万円
石川島播磨で賃金・思想差別がおこなわれていることを示す新しい文書が明らかになったのを受けて、労働者が差別の是正を求める手記を発表しました。その要旨を紹介します。
【横浜工場・Aさん】命がけで働いてきたのに石川島播磨はあらゆる差別をしてきました。賃金差別をはじめ職場のあらゆる行事からの排除―新年会、仕事納め、歓送迎会、暑気払いなど何度参加を申し入れても拒否され、冠婚葬祭のお香典も一緒に出させてもらえない状態でした。仕事はだれにも負けない、後ろ指をさされるような仕事はしないとがんばってきました。それが、どんなに努力しても初めから評価することなど何も考えていないことが分かり、激しい怒りがわきおこってきました。差別のない、安心して働き、語り合える職場になることを願わずにおれません。
【横浜工場・Bさん】同期生は課長か課長代理ですが、私は四十歳のときに専門職二級に格付けされてから十九年間すえ置かれたままです。二十年間の賃金の損害額は三千七百万円にもなります。
今年の成績給は、働いている人の中では最低の「D」評価でした。賃金差別はなくなっていません。私にたいする排除や「職場八分」、不当に低く抑えられた賃金は私の思想信条を理由とした差別にほかなりません。職場全体が気持ちよく仕事でき、将来を背負う新入社員が中途退職しないように、反共労務支配を直ちにやめるべきです。
【横浜工場・Cさん】電気溶接工として働いてきたのに八七年から資料室に配転させられました。常駐するほどの仕事もなく一人で勤務させられ、電話もなく、私を職場から追い出すことを目的に用意された職場でした。工場集約に伴い八九年からは元ボイラー管理室で倉庫として使用されていた薄暗いところに移転させられました。
退職後、資料室には誰も配置されず、今では無人でカギがかけられています。私を職場から隔離し、さらし者にすることで精神的に追い詰めることを目的とした施設だったことは明白です。こんなことは絶対にやってはならないという行政指導を強く求めます。
【横浜工場・Dさん】入社当時は設計の仕事をしていましたが、八六年、人と技術を大切にする経営が必要だと思い七千人の人減らしに反対してから、十九年にわたって設計の仕事を取り上げられコピーや製本など雑用を手伝っています。仕事をとりあげておきながら、アウトプット(成果)が少ないとして最低評価を繰り返しています。
仕事だけでなく歓送迎会、新年会、忘年会などの連絡もなくなり、排除されています。電子メールあて先の所属単位リストからも私の名前が除かれています。
会社は私の労働力をまったく生かしていません。これは会社にとっても不利益をもたらすものだと思います。一日も早く職場から差別をなくし、自由にものがいえる明るい職場をつくっていきたいと思います。

