2006年8月19日(土)「しんぶん赤旗」

日韓教師

共同副教材を作成

交流の歴史を学ぶ

暮らし・文化を理解し合う


 日本と韓国の教師が中学・高校生向けにつくった歴史授業用の共同副教材が完成しました。日本の歴史教育者協議会(歴教協)と韓国の全国歴史教師の会(歴教会)が五年がかりで完成。二〇〇一年の教科書問題を機に、友好と平和を築く教育のためには相互理解が不可欠と考えた日韓の教師による初めての共同副教材です。七月二十九―三十一日に埼玉県で開かれた歴教協大会で、両国の教師が五年間の作業を報告しました。(中村圭吾、面川誠)


 二〇〇一年四月、日本の文部科学省が、侵略戦争を美化する「新しい歴史教科書をつくる会」主導の歴史教科書を検定合格させ、韓国や中国で厳しい批判が起こりました。同年七月、歴教協大会に参加した韓国の歴教会の代表が副教材づくりを提案します。

同じ悩み

 日韓の教師は同じ悩みを抱えていました。侵略と植民地支配の実態を授業で教えることが、必ずしも生徒に平和と友好の大切さを納得させる結果にならないという経験です。

 「朝鮮時代の農民のくらし」を執筆したソウル・中央高校の教師・崔鉉三さんは、こう問い掛けます。「『歴史認識の共有』と言うとき、近現代史に関心が集まりがちだ。しかし、侵略者としての日本を教えるだけでは、日本は悪魔のような国という印象が残る。ひどい歴史を知るだけでは、生徒は友好の必要性を実感できない」

 こうした問題意識から、内容は日本と朝鮮の関係史にとどまらず、それぞれの社会と文化に多くのページを割きました。人々の営みを知ってこそ親近感を持ち、互いに尊重し理解し合う気持ちを持てると考えたからです。

35テーマ

 副教材は通史の形を取らず、中国と古代東アジア、かなとハングル、江戸時代と李朝時代の農民のくらしなど三十五のテーマを選定。日本と朝鮮・韓国の歴史を「東アジアのなかでとらえながら共通点と違いを理解し、交流のなかで歩んできた歴史としてつかむ」(副教材の前文)ことを狙いとしています。

 原稿の検討を積み重ねたうえ、時間の関係上、ひとまず前近代までの出版となりました。近現代は今後も交流を続けながら検討を続けます。

 日本側で副教材編集の初代責任者を務めた宮原武夫・元千葉大学教授は「副教材を使って授業をやり、生徒の反応をみれば、両国の歴史認識の違いがさらに明らかになる。それによって歴史認識共有の第一歩が始まる。大変な作業を五年間で始めたと実感している」と振り返りました。

 副教材のタイトルは「向かい合う日本と韓国・朝鮮の歴史」。古代史から前近代までを扱い、韓国語版は八月に四季節出版社から、日本語版は九月に青木書店から上下二冊で出版されます。


“浮世絵授業”で日本が見えた

 「浮世絵は、今でいうと、アイドルのブロマイドや宣伝ポスターみたいなものなんです」。韓国・ソウル市内の中央高校で十日、千葉県の小学校教師(57)が、黒板にかけた浮世絵を前に説明します。

 冗談をまじえるほど流ちょうな韓国語での説明に、二十数人の生徒から矢継ぎ早に質問が飛びました。共同副教材の出版を記念して行った共同授業での一場面です。

 授業のテーマは、「江戸時代の庶民文化」。歌舞伎の役者を描いた本物の浮世絵を見せながら、何を描いたものか、誰が買っていったのか考えてもらう授業です。

 「浮世絵を実際に見ることで、日本の文化を知ってもらう。自分の国の文化と対比できるようになってもらうこと」(千葉県の小学校教師)が授業のねらいです。午前中は同校教師の崔鉉三さんが朝鮮時代の民画について授業をしました。

 生徒の感想文には、「韓国の民画と比べることで、朝鮮文化の独自性と、日本との共通点が見えてよかった」「独島(日本名・竹島)問題があって日本に対して反感があった。日本の文化について勉強して、敵だと認識してはいけないことが分かった」と記されていました。

 副教材出版は韓国で大きな関心を集め、共同授業には主要日刊紙、全国ネット局が取材につめかけました。


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