2006年8月16日(水)「しんぶん赤旗」
A級戦犯分祀すればいいのか?
〈問い〉 靖国神社問題は、A級戦犯を分祀(ぶんし)すれば、それでいいのですか?(福島・一読者)
〈答え〉 A級戦犯とは、ポツダム宣言第10項にもとづく極東国際軍事裁判で裁かれ(天皇をのぞく)、有罪となった戦争指導者25人をさしています。戦争犯罪人として死刑になった7人と獄死者7人の計14人が靖国神社に合祀(ごうし)されています。
A級戦犯をまつる靖国神社に首相が参拝したことにたいして国内外で批判が広がり、とくに日本に侵略された中国や韓国をはじめアジア諸国からはきびしい抗議の声があがっています。戦後の世界秩序の原点を否定することになる首相の靖国参拝には、アメリカでも批判の声が強まっています。
A級戦犯合祀は1978年10月にひそかに行われました。翌年4月に朝日新聞がスクープして問題になりますが、85年8月15日に中曽根首相(当時)が参拝して以来、高まる批判をかわす試みとして、分祀案が絶えず浮上してきました。しかし、たとえA級戦犯を分祀しても、侵略戦争を賛美する靖国神社に首相をはじめ公人が参拝すべきではなく、それは日本の国益を害することになります。
靖国神社は戦没者を追悼する神社ではなく、「英霊」の「顕彰」を目的とした特殊な宗教施設です。靖国神社の言葉では「武勲」、すなわち戦争行為そのものをほめたたえる場です。靖国神社の境内にある遊就館は、明治維新以来の侵略戦争、とくにアジア諸国民など2千万人の生命をうばったアジア・太平洋戦争、靖国神社のいう「大東亜戦争」は正しい戦争だったと宣伝するセンターの役割を担っています。ヨーロッパでいえばネオ・ナチに匹敵する考え方と政治目的をもった運動体ということができます。
靖国神社は戦争犯罪などなかった、敵である連合軍が一方的な裁判で押しつけたぬれぎぬだ、と主張しますが、これは戦後日本が国際社会に復帰するさいに認めた前提さえ否定するもので、国際的にはとうてい認知されるものではありません。(平)
〔2006・8・16(水)〕

