2006年8月12日(土)「しんぶん赤旗」

裏金づくり常態化

「500万円焼却・廃棄」に怒り

岐阜県


 年間4億円を超える「裏金」づくりが判明した岐阜県。現在も、隠ぺいのため預けられた県職員組合の金庫に1億円以上が保管されています。当時の森元恒雄副知事(現・自民党参院議員)は、裏金隠ぺいに「知事の了解を得た」と説明する一方、梶原拓前知事は具体的関与を否定しました。疑惑はまだ解明されていません。(唐沢俊治)


94年には4億円超

 「ひどい時には、一カ月に二十四、五日も出張したことにして旅費を請求した。実際には、せいぜい四、五日。罪の意識はあったが、自分の懐に入るわけではないので、すぐに慣れっこになってしまった」。元県職員の男性が重い口を開き、時折目頭を押さえながら裏金づくりの実態を語りました。

 裏金の大半は、旅費の架空請求によってつくられました。食糧費、日々雇用職員の賃金、タクシー代などの架空請求によるものもありました。庶務係があらかじめ職員の私印を集め、架空の旅行命令書を作成し“旅費”を受け取っていました。

 よく利用する飲食店から白紙の請求書・領収書を預かり、架空の支出命令書で飲食店に振り込み、懇談会の経費や幹部間の飲食費に充てられました。

 県の調査チームによると、裏金づくりは全庁に及び、一九九四年度だけで推計四億六千六百万円。前出の元県職員は、「裏金づくりは、何十年も前からあった。自分でいくらつくったかも分からない」。毎年巨額の裏金がつくられ続けたことになります。

税金使い飲み食い

 裏金は、外部の人を招いた懇談会などの接待や、予算要望時の中央省庁への土産代など、通常の県予算として支出しにくいものにも使われました。「予算のお願いに行って、岐阜の“特産物”を関係する省庁にばらまいたわけですよ」(県職員)

 裏金づくりがされた当時の梶原拓前知事は、旧建設省出身です。一九八九年から四期十六年、知事職に在任し、大型公共事業はじめハコモノづくりに力を入れました。

 一九九五年から三回にわたり裏金問題を県議会で追及してきた日本共産党の大西啓勝県議や、党岐阜県委員会には、県関係者から多くの内部情報が寄せられています。大西県議は、「こうした情報から推察して、裏金は長良川河口堰(ぜき)の建設や、首都機能移転など、梶原県政が当時、力を入れていた政策を推進する“裏行政”に使われたのではないか」と指摘します。

 県庁には十一日までに担当課に九百八十九本の苦情、抗議の電話が寄せられています。とくに裏金の処分に困った職員がその一部五百万円を「廃棄した」「焼却した」と説明したことにたいし、「日々の生活に困っている人がいる中で、何を考えているんだ。税金を返せ」という怒りの声が多いといいます。

 元銀行員の宇野進さん(66)=岐阜市=は、「県民の血税を詐取して、飲み食いに使っていたなんてとんでもない。きちんと調査して洗いざらい明らかにし、退職した幹部も含め弁済してほしい」と言います。

「知事了解してた」

 裏金は県の各部署が管理していましたが、県庁の組織再編を控えた一九九九年、問題が表面化するのを避けるため、県職員組合(連合加盟の自治労参加)の口座に集約されることになりました。

 指示したのは、当時の森元副知事です。知事公室長に指示し、総務部長、出納長ら県幹部と相談。裏金を職員組合に集約することに組合側の了承を取り付けた出納長は、組合委員長の経験者でした。職員組合の現幹部は、「無理が利く極めてイレギュラーな(普通ではない)関係だった」と組合と県幹部の関係について話します。

 森元前副知事は今月七日、裏金の調査、公表を控えたことについて「知事の了解もいただいていた」と発表しました。

 一方、梶原前知事は八日の記者会見で、「裏金は公然の秘密だった」と就任当初から認識していたと認めたものの、隠ぺいや具体的関与について否定。「森元さん自身も、これだけの裏金があったと知らなかった」と説明の食い違いを見せました。

組合の幹部が管理

 県職員組合に集約された裏金は、委員長と書記次長が代々管理し、組合でも正規の会計に繰り入れたり、取引先企業への助成に二千五百万円を使うなど一億円以上が消費されました。

 組合が設けた訴訟費用の貸付制度「職務関連訴訟等特別会計」から、梶原前知事に対し七百二十三万円が貸し付けられています。口座残高と現金を含め、一億四千六百万円が今も組合の金庫に保管されています。

 大西県議は、「長期間、全庁的に行われた裏金づくりの責任は、前知事をはじめ県中枢部にあります。関係者はすべてを誠実に告白し県民に謝罪するとともに、責任に応じ裏金の返金をすべきです。森元参院議員は議員を辞職すべきです」と話します。


全容解明と返金求める

共産党県委員会

 日本共産党岐阜県委員会は十日、「県庁『裏金』問題に関する見解」を発表しました。見解では、裏金づくりで「発表された事実はほんの一部に過ぎません。三日の県の『資金調査チーム』の報告会で、日本共産党は引き続きの調査を求め、一九九五年から九七年の間の三十九ある外郭団体の調査も認めさせました」と指摘しています。

 今後、「県民の大きな怒りに応えて引き続きその全容解明」を要求するとともに、「梶原拓前知事についてはすべてを誠実に告白し、県民に深く謝罪し、その責任に応じた返金を求めるとともに、森元恒雄参議院議員に対して辞職」を求めています。

 「森元恒雄前副知事を含む当時の県中枢部に対して責任の追及と裏金の返金」を求め、「民主的な県政の確立をめざして全力をつくす」決意を表明しています。


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