2006年8月12日(土)「しんぶん赤旗」

主張

GDP

格差を拡大する「回復」の実態


 四―六月のGDP(国内総生産)は、物価変動の影響を除いた実質で0・2%増となりました。昨年十―十二月に1・1%増となった後、ことし一―三月の0・7%増に続いて成長率は大きく減速しています。

 家計消費の伸びがゼロ%台の横ばいを続けるもとで、成長率を引っ張ってきた輸出が同時期に3・8%、2・2%、0・9%と、急速に伸びを鈍らせてきたためです。

異常な「成長」の姿

 消費の動向を総務省の家計調査で見ると、前年同期と比べた総世帯の実質消費は一昨年の十―十二月からマイナス基調が続き、四―六月は1・9%の減少です。実収入が連続で減っていることが響いています。

 小泉内閣は「消費、投資、外需が回復する中で相互にバランスのとれた民需主導の景気回復となっている」(二〇〇六年版「経済財政白書」)と自画自賛しています。

 しかし、今回の「回復」の実態は「回復」期間が戦後最長を更新するかが話題になるほど長期にわたっているのに、いまだに家計に元気が戻らない異常な姿となっています。

 大企業が利益を増やしても、従業員の給与が減るという異例な事態が起こっているためです。大企業はバブル期を超えて最高益を更新しているのに、従業員給与は一九九七年から〇四年に五兆円も減りました。他方で配当や役員給与・賞与は跳ね上がり、二・六兆円も増加しました。

 ことしの「経済財政白書」や「労働経済白書」が取り上げている若者の所得格差の拡大は、こうした異常な動きが社会にもたらした破壊的な作用の一端を示しています。企業が正社員を非正規雇用に置き換えて「賃金コスト」を抑え、収益を増やし、それによって、とりわけ若者の所得格差を拡大させる関係です。

 雇用の不安定化と賃金引き下げ、格差と貧困の拡大を一方のエンジンにした「景気回復」です。一部の経済学者とともに小泉内閣が言う「景気が回復すれば格差は是正される」という説明は、そもそも成り立ちません。大企業の身勝手なリストラを可能にしたのは小泉内閣が強行した雇用の規制緩和です。格差と貧困の拡大が“自然現象”であるかのような姿勢は無責任のきわみです。

 「回復」のもう一方のエンジンは輸出です。輸出増加は中国の高成長と、中国の主要輸出先でもある米国の景気拡大のおかげです。四―六月の輸出減少は米国向けが振るわなかったからです。

 米国は昨年、経常収支と財政の赤字が合わせて百二十兆円を超えました。IMF(国際通貨基金)など国際機関が、これを放置するとドル急落、米経済の崩壊が起きると改めて警鐘を鳴らしています。

 こうした巨大な不均衡を抱える米国経済を原油高騰が襲っています。中東情勢をかつてなく悪化させたイラク侵略戦争、原油市場の投機市場化などによって米国自身が招いた市場価格の急騰です。

米国頼みに未来はない

 景気が冷えれば輸入が減り貿易赤字が減った以前と違い、現在の米国経済は不況になっても輸入以上に輸出が減って赤字が増える袋小路に陥っている―。民間エコノミストがリポートしています。生産拠点を海外に移転し、生産の空洞化がすすんだためです。米国頼みの「回復」に未来はありません。

 大企業中心の経済政策、財界のやりたい放題を支える「構造改革」を改め、くらしに軸足を置いた経済運営に抜本転換する民主的な経済改革がますます重要になっています。


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