
2006年8月12日(土)「しんぶん赤旗」
原爆症訴訟 国が控訴
広島判決 被爆者「死を待つのか」
原告四十一人の病気は原爆症と認めた広島地裁判決にたいし厚生労働省は十一日、「科学的考察がなされていない」として控訴しました。同日、被爆者や原告、支援の人々は「国は、被爆者の実態、願いをなぜうけとめようとしないのか」と各地で抗議の声を突きつけました。
広島の原告は、六十二歳から九十四歳。判決を目にすることなく十人が亡くなっています。午後四時半、東京の厚生労働省前には「厚労省に抗議する」「被爆者が死に絶えるのを待っているのか」と横断幕。被爆者や弁護士、支援者ら百人が「不当な控訴をとりさげよ」と唱和しました。柵越しにしか抗議文を受けとろうとしない厚労省に怒りの声が起きました。
広島原告団など六団体は「原告らに会おうともせず、控訴の暴挙に至ったことは許せない。認定制度を抜本的に改めるまでたたかい続ける」との抗議声明をだしました。
広島市で控訴の知らせを聞いた原告団長の重住澄夫さん(78)は「これは彼らにとって勝つ見込みのない控訴。驚きはない」と語りました。
広島判決(四日)は、遠距離被爆や原爆投下後に広島に入った入市被爆を含め全員について、がん、白血病はじめ脳腫瘍(しゅよう)などの病気と原爆による放射線との関係を認めました。同時に、病気発症の確率を示した国の「原因確率」の考えについても限界と弱点があると指摘。外部・内部被ばくの影響は別途慎重に検討しなければならないと審査の是正を迫りました。
広島訴訟の佐々木猛也弁護団長は「国の審査は、爆心地二キロメートル以内、爆発後〇・〇一秒までに発する放射線量しか考慮していない。非科学的なのは国だ」と批判しました。