2006年8月8日(火)「しんぶん赤旗」
「被害者 大勢いる」
元女性信者 勇気ある告発
「摂理」教祖の暴行
女性信者への性的暴行容疑で国際手配されている鄭明析教祖(61)と「摂理」(韓国名JMS)の問題で七日、日韓の元女性信者が東京で記者会見し被害実態を証言、「被害者は大勢いる」として世論喚起を求めました。
会見したのは日本人元信者のAさん(32)、韓国人のBさん(27)、Cさん(23)と、韓国の被害者支援団体「エクソダス」の金度亨代表ら。
Aさんは入信した一九九五年、訪韓して教祖と面談。スカートから手を入れてわいせつ行為をされました。日本の幹部から事前に「先生は抱きしめたりキスをすることがあるが、それは神のなさることだ」と指導され、「いまの自分に理解できなくても大切な意味がある」と思っていたといいます。
Bさんは二〇〇六年、Cさんは九八年にそれぞれ、教祖が滞在している中国と香港に呼ばれて性的交渉を強制されました。教祖は行為のあと、教団のテコンドー部にいたBさんに「あなたがテコンドーを頑張ったのは、私とこうなるためだったのだ」と語りました。
B、Cさんはエクソダスなどの援助で脱会後、教祖を性的暴行や強制わいせつで刑事告訴、Aさんも韓国裁判所に民事告訴しました。
女性たちは「教祖への信頼を失うと自分にかかわるすべての人に害が及ぶと教えられ、自分が被害を受けているという自覚すらなかった」(Bさん)などと述べ、信者や元信者に「これ以上被害を広げないため、泣き寝入りせず勇気を持って告発してほしい」と呼びかけました。
金代表は内部資料をもとに、日本の教団勢力は三十カ所以上の拠点(教会)があり信者二千人以上と推計し、「教団と知らずに彼らのサークルにくわわっている信者予備軍が大勢いる」と述べました。同席した渡辺博弁護士は「彼らは正体を隠して信者を増やしている」と指摘しました。
解説
「統一協会の焼き直し」
「摂理」の日本進出は一九八〇年代半ば。当時は「モーニングスター(MS)」と名乗り、「統一協会の分派」として話題になりました。東大や東工大など有名校の学生、院生が相次いで入信することでも注目されました。
鄭明析教祖は統一協会の講師経験者。キリスト教の聖書に基づくと称する『三十講論』をまとめて教理にし、文鮮明・統一協会教祖と同様、みずから再臨主=メシアと名乗りました。「摂理」信者の救済に当たっている牧師は「体系だった教理ではなく、教理も伝道(勧誘)手法も統一協会の焼き直しという印象」だといいます。
教理の柱は“聖書に登場するエバがサタン(悪魔)とセックスしたために人類は原罪を背負った。キリストにより霊的救済はできたが肉的救済ができていない”と、統一協会の『原理講論』に酷似。統一協会は、文鮮明と女性信者の性交(血分け)で肉的救済ができるとして、集団結婚(合同結婚)の原理をあみ出しました。「摂理」も、合同結婚の儀式をとり入れています。
正体を隠してスポーツや文化のサークルを装って接近し、人間関係で離れにくくしたうえで「聖書学習」に誘い込み、極度の集中講座などによってマインドコントロールの状況にする。その手法や、さまざまな口実をつけた献金、「霊感商法まがいの物品販売」(金・エクソダス代表)などの方法も両者はよく似ています。鄭教祖は九九年に国外脱出後も、日本や韓国の組織から資金を送らせ、信者を呼び寄せているといいます。
信者同士は男女を問わず横の連絡を極端に制限され、指導部への定期的報告を義務づける、組織内部のことを漏らせば地獄におちるなどとも教えています。いずれもマインドコントロール集団に特徴的な手法です。(柿田睦夫)