2006年8月7日(月)「しんぶん赤旗」

列島だより

駅、安心ね 障害者 高齢者


 バリアフリー新法が六月成立しました。障害者や高齢者が安心して外出し、暮らせる安全な街が求められています。兵庫県伊丹市と福岡市にみてみました。


兵庫 阪急伊丹駅

ビル全体の段差解消

地図

 一九九五年一月の阪神・淡路大震災で倒壊した兵庫県伊丹市の阪急伊丹駅が、九八年十一月、高齢者や障害者にやさしい駅(バリアフリー)に生まれ変わりました。

 人口十九万人の伊丹市、一日の乗降客は二万三千人です。

 車いすが二台同時に入れるエレベーターは四階建てビル入り口近くに配置され、地下階から屋上まで運行。駅ホームは避難用スロープと待避所を設置。ビル全体の段差をなくす―きめ細やかな配慮がされています。

委員に身障連

 バリアフリー化は、市身体障害者福祉連合会(身障連)が市に、障害者の意見を取り入れるよう要望してきたことから実現しました。九六年四月に発足した「阪急伊丹駅アメニティターミナル整備検討委員会」には、阪急電鉄や行政機関とともに老人クラブ連合会、身障連も委員として参加し、福祉駅への具体策が検討されるようになりました。

 検討委員会では、屋上駐車場に屋根の設置を要望したところ、障害者用駐車場からエレベーターまでの間が屋根つきに。また、音声ガイドシステムでは、体験ツアーや視力障害者三十人による実体験を行い、もっとも使いやすいものを選択することもできました。

 検討委員会ワーキングでは、当事者が多数参加して工事現場を視察。トイレ、駅ホーム、緊急避難場所などを細かくチェックし、トイレの傾斜鏡を少し低い位置で垂直に取り付けるなどの改善や、トイレの汚物処理槽設置、ホームからの避難経路の設置を実現しています。

 検討委員会の委員として参加した、伊丹市肢体障害者協会車椅子部会代表の加藤作子さんは「いろいろな議論を重ねるなかで、視覚・聴覚や精神障害などハンディをもつ人の気持ちも考えるようになった」といいます。

 加藤さんは「自分たちも参加して一生懸命つくりあげた駅。完成したときは言葉につくせないほどでした」と語っています。

完成後も調査

 完成後、検討委員会が行った利用者アンケートで、テナントの店舗に段差が生じていたこと、一階の出入り口のうち二カ所が手動式で車いすでは開閉が困難なことが明らかになりました。

 加藤さんは、「今回の伊丹のケースを参考に、不十分な点を改善しながら利用者の参画の方法などもステップアップしてほしい」といいます。

 日本共産党のこくた恵二衆院議員と上原秀樹、かしば優美両市議は四月、同市の障害者団体と懇談しました。六月に成立した、バリアフリー新法の先取り、といわれた同駅での取り組みを聴き新法の改善、充実に役立てました。(日本共産党伊丹市議団・上原秀樹)


福岡市地下鉄

転落防止柵 全35駅で

 福岡市の公営「福岡市地下鉄」の安全対策、バリアフリー化がすすんでいます。乗客が線路へ転落するのを防止する可動式ホームドア(防護柵=さく)もその一つです。障害者団体と日本共産党市議団の連携した運動で地下鉄三路線の全三十五駅に実現しました。

 障害者から、「転落しないし、確認しにくかった車両号数や扉の位置などが分かる点字も付き、助かっている」と喜ばれています。

 ホームドアは地下鉄車両が駅に来ると、列車扉とホームドアが連動して開閉し、乗客が乗降できるシステム。

 福岡市地下鉄は三路線(総延長二十九・八キロメートル)を営業中。「空港線」「箱崎線」は一九九三年三月から全線開通、「七隈線」は二〇〇五年二月に開業しました。全駅バリアフリー化が実現したのは〇六年一月です。

5年間で39件

 開業後から障害者ら乗客がプラットホームから線路へ転落する事故が相次ぎました。

 〇一年までの過去五年間の転落事故は三十九件。障害者一件、酔客二十四件、その他十件は本を読みながら足を滑らしたもので、死亡事故には至りませんでした。

 しかし、視力障害者がホームの突端を歩いていて転落しかけた事例は多数ありました。このため、福岡県視覚障害者友好協会福岡支部はホームドアの設置など安全対策について市と交渉し、地下鉄建設の工事中に駅調査も実施。バリアフリーに対するアドバイスを市に行ってきました。

 同福岡支部の菅野良子支部長(53)は「とくに地下鉄室見、藤崎両駅の構内は階段が多く複雑で、階段の上り口や手すり、エレベーターの位置が分からなくなるので出入り口まで歩くのが大変。今後、それらの改善を求めていきたい」と話します。

財源確保せよ

 市議会では九九年以降、日本共産党の綿貫英彦市議(当時。現在、市議候補)が、障害者から、「地下鉄ホームは怖いので安全柵を設置してほしい」との要望を受け、議会条例予算特別委員会・第二分科会などで欠かさず取り上げてきました。

 「地下鉄ホームにおいて、転落の危険を感じたという市民は多い。安全管理に努めるべきだ」「国の補助、融資などで財源確保の方法はないのか」―。綿貫氏は障害者、市民の声を市につきつけてきました。

 市当局は当初、既設の空港線、箱崎線について「ホームドア設置は施設の改良工事で国の補助対象外」などと設置に難色を示しましたが、綿貫質問に、「国の動きをみて補助制度が創設されれば、活用できるよう検討していく」と答弁。とうとう国からの補助がつき、総額三十八億円をかけ、全駅に設置されました。

 綿貫前市議は「バリアフリーをさらに広げ、福岡市が手本となって障害者が自由に動きまわれる対策をすすめるように、今後も強力に働きかけていきたい」と語りました。

 (福岡県・大岡真)


住民参加で安全

バリアフリー新法

 高齢者や障害者の自立的な移動を容易にし、社会参加の促進をめざすバリアフリー新法「高齢者、障害者等移動等円滑化促進法」が成立しました(六月十五日、全会一致。公布後半年以内に施行)。建築物のバリアフリー化促進のハートビル法と交通バリアフリー法を一本化、見直しを行ったもの。

 (1)対象を高齢者、身障者に限定していた制限を見直し、精神・知的障害者にも拡大(2)バリアフリー化すべき対象施設に一定の、道路、駐車場、都市公園を追加(3)市町村がつくる重点整備地区や計画について、当事者参加を明記した協議会制度の規定や、基本構想の作成を住民が提案できるようにするなど住民参加の仕組みを整えました。

 日本共産党は現行法より改善が図られており、「障害者団体の粘り強い運動の成果」と評価しました。

 一方で、移動の自由や安全が国民にとって、本源的な権利であることが明記されていないこと。国の責任や事業者の果たすべき責任が不十分。バリアフリー基準作成への当事者参加などの問題も残されており、修正案を提出してさらなる改善を求めました。


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