2006年8月2日(水)「しんぶん赤旗」

主張

防衛白書

国民の意思踏みにじるのか


 ことしの防衛白書(「日本の防衛」)が発表になりました。小泉内閣になって六回目、小泉首相の任期中最後になる白書です。

 白書は、国会でまだ成立もしていない防衛「省」昇格法案や海外活動を自衛隊の本来任務とする法案を積極的に売り込むとともに、わざわざ日米同盟強化に一章を割き、全国各地で住民と自治体が反対している米軍再編をしゃにむに推進する姿勢をあらわにしています。米軍と一体で「海外で戦争のできる軍隊」になることを目指して、国民の意思は踏みにじってもいいという態度です。

「戦争できる国」のため

 小泉内閣の五年あまりを通じて、日本の軍事力である自衛隊の増強と日米軍事同盟の強化が急速に進められてきました。

 二〇〇一年の「9・11同時テロ」をきっかけにアフガニスタンとイラクでのアメリカの攻撃・侵略を支援するためにインド洋とイラクへ自衛隊を派兵したのをはじめ、政府と自衛隊の長年の懸案だった「有事法制」の制定、第三次「防衛計画の大綱」と新「中期防」の決定、アメリカとのミサイル防衛(MD)開発の合意、そしてアメリカとともに先制攻撃の戦争をたたかうことになる在日米軍再編の協議などです。

 一連の動きは、憲法九条を改悪し「自衛軍」を明記しようという改憲策動ともあいまって、侵略的に強化された日米同盟のもとで日本を「海外で戦争をする国」とし、自衛隊を米軍と一体で「戦争のできる軍隊」にすることを狙ったものです。

 今回の白書は、こうしたうえに今年五月アメリカとの間で在日米軍の再編について最終合意したことを踏まえ、「日米安保を一層実効的にする」と、国民の反対を押し切っても対米公約を無条件で実行していく立場をむき出しにしています。

 白書が国会で審議中にもかかわらず力をこめて宣伝する防衛「省」昇格法案は、ただ「防衛庁」の名前を「防衛省」にするだけではありません。それは「国際平和協力活動」を自衛隊の本来任務にすることとあわせ、防衛庁と自衛隊を「新たな任務を果たし得る組織へ」(白書)全面的に改革していくものです。

 今回の白書が、「日米関係の意義から施策まで包括的に取り上げる章立ては、防衛白書史上初」(説明資料)という触れ込みで、独立した一章を立てた「日米安全保障体制の強化」の章では、在日米軍再編の合意内容について詳しく説明し、「米国と協力して速やかにかつ徹底して実施していく」としています。

 在日米軍の再編とは、日本列島を先制攻撃の戦争をたたかうための米軍の拠点とするとともに、自衛隊と米軍との本格的な軍事的協力体制を作り上げることです。これによって自衛隊は本格的に「海外で戦争のできる軍隊」としての役割を担わされることになります。国民の意思を踏みにじった日米軍事同盟の侵略的強化は許されません。

住民の反対には触れない

 白書には、沖縄の米海兵隊の役割や海兵隊のグアム移転経費を日本側が負担することなどへの説明はあっても、沖縄や岩国や首都圏での、住民と自治体が米軍再編に反対している事実についての言及はありません。白書が国民よりアメリカの利益を優先させていることは明らかです。

 白書が盛り込んだ防衛庁の「省」昇格や米軍再編は、国民との抜きがたい矛盾を抱えています。アメリカいいなりの危険な企てに、主権者・国民の批判は避けられません。


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