2006年8月1日(火)「しんぶん赤旗」

主張

医療改悪

高齢者への負担増は中止せよ


 医療制度改悪による患者負担増が十月から実施されます。

 患者負担を増やして受診を抑制することは、早期発見、早期治療を妨げる最悪のやり方です。到底容認できません。

 医療制度改悪法は今年六月、自民党、公明党の賛成で成立しました。十月実施の負担増の柱は(1)七十歳以上の「現役並み所得者」の窓口負担の二割から三割への引き上げ(2)七十歳以上の療養病床入院患者の食費、居住費の自己負担増(3)高額療養費の自己負担限度額の引き上げ―です。

八月から負担増の人も

 高齢者を中心とした今度の負担増は、これまで以上に深刻です。

 六月に実施された、住民税の老年者控除の廃止、公的年金等控除の縮小、非課税措置の廃止、定率減税の半減の影響で、高齢者に大幅な増税があったからです。

 収入は増えず、年金は減っているというのに、税金が何倍にも増えます。それに連動して国民健康保険や介護保険料も負担増になる。介護保険料は三年に一度の見直しでほとんどの市町村で大幅引き上げになっており、二重の負担増です。

 この高齢者への控除縮小・廃止が医療費の窓口負担にも大きな影響を与えます。

 二割負担の「現役並み所得者」(課税所得が百四十五万円)の範囲が、この八月から大幅に広がります。控除の廃止・縮小で、対象となる年収基準が夫婦二人世帯でも単身世帯でも約百万円も引き下げとなります。年収が夫婦二人世帯で約五百二十万円以上、単身世帯で約三百八十三万円以上あると、「現役並み所得者」とされます。その対象は約九十万人も増え約二百万人にも及びます。

 新たに「現役並み所得者」とされた高齢者は、医療費の患者負担が八月には一割から二割へ、十月には二割から三割へと、わずか二カ月で三倍になるのです。

 「現役並み所得者」は“高額所得者”ではありません。国民全体のなかでみればごく平均的な収入です。

 政府は、負担増を正当化するために「高齢者と現役世代との公平」をいっていますが、病気は公平にはやってきません。病気にかかりやすく、治療にも時間がかかる高齢者の負担は、現役世代より低く抑えることこそ公平です。「現役並み所得者」と名づけて高齢者に負担増を押し付け、その範囲を税制改悪で拡大していく卑劣なやり方を認めるわけにはいきません。

 日本の医療費は、発達した資本主義国のなかで経済の規模に比べて低い水準にあるのに、患者の窓口負担は突出して重いのが特徴です。窓口負担は引き上げるのではなく、引き下げが必要です。

 政府は、医療制度改悪法に基づき、「混合診療」拡大の十月実施にむけた作業も進めています。政府は「必要な医療は保険適用する」と答弁しています。保険外負担の拡大を許さず、保険でだれでもどんな病気でもみてもらえる仕組みを充実させるとりくみが必要です。

今後も続く医療改悪

 二〇〇八年四月には七十五歳以上のすべての高齢者から保険料を徴収する「高齢者医療制度」が導入されます。滞納者から保険証をとりあげる措置を盛り込んでいます。制度導入と同時に「現役並み所得者」を除く七十―七十四歳の高齢者の患者負担も一割から二割に引き上げとなります。情け容赦のない仕打ちです。

 高齢者に雪だるま式に痛みを押し付ける大増税と医療制度改悪は中止することを求めます。


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