2006年7月25日(火)「しんぶん赤旗」
主張
米軍基地再編
住民意思に従うことが重要だ
政府は、米軍再編の最終合意(五月一日)後、全国の関係自治体にたいし、基地再編押し付けのための「説得」活動をつよめています。
基地再編の押し付けに反対する自治体ぐるみのたたかいは、一部に曲折はあっても、力強く前進しています。日米両政府が日米合同委員会(安保条約の協議機関)に「在日米軍再編総括部会」を新設しても再編の具体化は思い通りに進めることができません。住民の運動と民意にそった自治体のとりくみが大きな力を発揮しているからです。
憲法の地方自治原則
米軍再編は、日本を、「日本防衛」と関係のないアメリカの世界戦略のための「殴りこみ」作戦の足場にするものです。戦争を放棄した憲法九条をもつ日本の国民が、アジアと世界の平和を脅かす米軍再編を受け入れられるはずがありません。
基地再編は、日本の平和を脅かすとともに、地域住民に爆音被害、墜落の恐怖、米軍犯罪などの危険をさらに増幅させるものです。基地の痛みをなくすどころか激増させることはあきらかです。
沖縄県名護市での新基地建設、岩国基地(山口県岩国市)への空母艦載機部隊移駐、キャンプ座間(神奈川県座間市、相模原市)や自衛隊基地への米軍戦闘機の訓練移転に反対するのは、憲法が国民に保障した「健康で文化的な最低限度の生活」を守るための正当な自己防衛行動です。住民の要求と行動は憲法で裏付けられたものです。
政府や自治体は、国民の平和的生存権を保障する義務を負っています。基地の危険と隣り合わせの生活を住民に押し付けるのは憲法に反する行為です。「基地問題は国の専管事項」だから地方は米軍再編を認めざるを得ないという議論がありますが、これは誤っています。憲法には基地問題が国の専管事項という規定はありません。憲法で戦争を放棄しているのですから当然です。誤った議論を地方に押し付けるのも、それをうのみにするのも間違っています。
憲法の地方自治の原則は、住民自治を基礎にした団体自治を政府が保障する規定です。基本は住民の自治です。井原勝介岩国市長は、住民投票で有権者の過半数が米空母艦載機部隊の移駐に反対したことについて、「この民意の実現に努力することこそ市長としての重い責任」とのべています。これこそ地方自治の原則にそった態度です。
政府のとるべき道は地方自治の原則にたち、市民の意思を基礎にした岩国市の要求を認め、基地再編の押し付けをやめることです。くりかえしの反対要請をつっぱね、受け入れるまで働きかける卑劣なやり方はやめるべきです。基地の痛みを激しくする米軍再編は、小泉首相が「どこでも住民投票をすれば反対でしょうね」とのべているように、どこでも受け入れられるはずのないものです。反対の声を無視する政府の強権的なやり方を許してはなりません。
全国から新たな前進
米軍再編最終合意後、三万人が集まった原子力空母の配備に反対し米軍再編合意の撤回をもとめる「7・9首都圏大集会」や、広島県の五つの市が主催し井原岩国市長も参加したシンポジウムなど、全国各地で新たな前進がはじまっています。
政府が住民の意向を無視し、あくまで再編合意を強行すれば、アメリカいいなりの政治と国民との矛盾がますます広がるだけです。全国の心を一つに、米軍再編反対のたたかいを広げつよめていきましょう。