2006年7月21日(金)「しんぶん赤旗」

迎撃ミサイル沖縄配備

増大する基地負担

軍事緊張高め安全危うく


 防衛施設庁の北原巌男長官が二十日、沖縄の米軍嘉手納基地と同嘉手納弾薬庫への「ミサイル防衛」用ミサイル(PAC3)の配備を伝えたことに、地元自治体が「基地負担が増大する」と一斉に反発したのは当然です。


約束を破り捨て

 日米両政府が五月に決定した在日米軍再編の「最終報告」は、嘉手納基地について、「基地負担の軽減策」という触れ込みで、米軍機訓練の一部を本土の航空自衛隊基地などに移転することを盛り込む一方、空自が米軍との共同訓練のため同基地を使用することを明記。地元から「負担は何ら軽減されない」と強い批判が起こっていました。

 これに加えて、PAC3が配備されることになれば、基地負担が増大するのは間違いありません。今回の発表は、日本政府が繰り返してきた「負担軽減」という約束をみずから乱暴に破り捨てるものです。

 しかも在日米軍再編の「最終報告」は、PAC3について「日本における既存の米軍施設・区域に展開」するとしているだけで、配備先は明らかにしていませんでした。日本政府は、配備先の決定にあたっては「地元の理解を得るということが大事」(額賀福志郎防衛庁長官、六月二十七日の記者会見)と強調していました。

 六月に嘉手納基地へのPAC3配備が一部メディアで報じられたのを受け地元自治体や議会がこぞって反対を表明していたにもかかわらず、日米両政府が配備を一方的に決めたことは、地元の怒りをいっそう増幅させるものです。

狙いは米軍防衛

 北原長官は地元自治体への説明で、PAC3の配備は「県民、国の安全確保に極めて有意義」と強調しました。

 しかし、PAC3は弾道ミサイルを着弾間近の段階(ターミナル段階)で迎撃するミサイルで、射程は十数キロとされています。沖縄本島の全域をカバーすることさえできません。

 PAC3の任務について、米国防総省の説明資料は「極めて重要な民間と軍の資産」や「展開部隊」の防衛を強調しています。主眼は、米軍基地・部隊の防衛です。北原長官と面談した宮城篤実・嘉手納町長は、PAC3配備は町民を守るためではなく、嘉手納基地を防御するためのものだと喝破しました。

 県民の「安全確保」を真剣に考えるのなら、ミサイル攻撃の標的になるような危険な米軍基地を沖縄から撤去することがなによりの道です。

先制攻撃可能に

 在日米軍司令部は二十日に出した報道発表で、PAC3の配備について、車力基地(青森県)の新型レーダー(Xバンド・レーダー)や横須賀基地(神奈川県)の新たなイージス艦の配備など、米軍が日本で進めている「ミサイル防衛」網づくりの一環であることを強調しています。

 米軍の「ミサイル防衛」は、軍事的優位を確保して、報復の心配なしに、先制攻撃の戦争に乗り出すことを可能にしようというものです。それは東アジア地域の軍事緊張を高め、「国の安全」も危うくすることになります。(榎本好孝)


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