2006年7月21日(金)「しんぶん赤旗」

特異な憲法観・歴史観つづる

安倍氏が著書で侵略戦争美化


 安倍晋三官房長官は二十日、初の単著となる『美しい国へ』(文春新書)を出版しました。現行憲法の精神を敗戦国としての“詫(わ)び証文”とやゆする憲法観や日本の侵略戦争を美化する歴史観などがつづられています。九月の自民党総裁選へ向け、政権構想の土台となるとみられます。

 このなかで安倍氏は「戦後日本の枠組みは、憲法はもちろん、教育方針の根幹である教育基本法まで、占領時代につくられたものだった」とのべ、その意図は「日本が二度と列強として台頭することのないよう、その手足を縛ること」にあったと強調。現行憲法の精神を示した前文を「敗戦国としての連合国に対する“詫び証文”のような宣言」などとのべ、「自主憲法の制定」こそ「自由民主党の存在意義のひとつ」との改憲論を展開しています。

 戦前の日本の侵略戦争については「先輩たちが真剣に生きてきた時代に思いを馳(は)せる必要があるのではないか」「その時代に生きた国民の視点で、虚心に歴史を見つめ直してみる。それが自然であり、もっとも大切なこと」などとして、歴史の検証をかなぐりすて、戦前への共感を表明しています。侵略戦争を推進したA級戦犯についても、「戦争の終わったあとにつくられた概念によって裁かれた人たちのことだ」などと擁護し、首相の靖国神社参拝も、「ごく自然なこと」とのべています。

 日米関係については「米国との同盟は不可欠」と日米同盟強化論を展開。米軍の戦争に公然と日本が参戦する集団的自衛権は行使できないとする政府の憲法解釈を「“禁治産者”の規定に似ている」などと攻撃しています。

 内政課題では、「セーフティネット」と「自己責任」が重視される社会をめざすとしていますが、国民の厳しい批判をあびた〇四年の年金改悪については、マクロ経済スライドの導入など給付抑制を強行したことで、「公的年金は事実上、安定した」とまったく無反省です。

 「格差問題」では、「構造改革が進んだ結果、格差があらわれてきたのは、ある意味で自然なこと」などと当然視。「教育を再生する」として、大学入学の条件に一定期間のボランティア活動を義務付けることなどを提唱しています。


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