2006年7月19日(水)「しんぶん赤旗」

対北決議

“中国はずし”狙った日本外交

各紙にみる舞台裏


 国連安保理が全会一致で採択した北朝鮮によるミサイル発射を非難した決議をめぐって、日本政府は加盟国による経済制裁や軍事制裁を規定した国連憲章第七章を明記した制裁決議に固執しました。その強硬姿勢の背景に、“中国はずし”“中国孤立化”の思惑があったことは、十七日付本紙三面で指摘しました。

 同日付で、各紙が報じた日本外交の舞台裏を明らかにした記事でも、同様の指摘が出ています。

安倍氏ら主導

 「日経」は、「『ロシアを取り込んでみせる。中国が拒否権を使えば、孤立するだけだ』。強硬路線を引っ張った日本政府高官は当初、周辺にこう語っていた」と指摘。十五日夜の段階でも、麻生太郎外相が「中国が拒否権を発動しても全く構わない。日本からは(先に)降りない」と語ったことを報じています。

 「朝日」も、「複数の政府関係者は『中国が拒否権を使うのなら仕方ない』と強気を崩さなかった。中国が拒否権を行使した場合に備え、中国のいない主要国首脳会議(G8サミット)で支持を訴える構想を語る関係者もいた」と紹介します。

 この強硬方針を主導したのが安倍晋三官房長官と麻生外相だったことは、各紙が一致して述べています。

 「毎日」は「外務省は当初から非難決議への譲歩を想定していたが、『安倍長官がネジを巻いた』(首相官邸筋)結果、麻生外相、谷内正太郎事務次官らが集まった7日の幹部協議で『中国に拒否権を行使させてもいい』と正面突破を図る方針を確認した」と報道。日本政府の“強気外交”を賛美する「産経」は、「第七章削除」受け入れについて、「『日本の国家としての意思を問われている。中国の拒否権行使もいとわない』と考える麻生、安倍両氏にとり『制裁』の根拠となる7章の削除は苦渋の決断だった」としています。

“常任理入り”

 北朝鮮の無法な行為にたいして、国際社会の一致した対処が求められているときに、日本政府がなぜ安保理の分裂覚悟という対応に出たのか。

 この点について、各紙は、強硬一辺倒で成果を得ようとする政府の姿勢をあげています。

 「朝日」は、「外務省幹部が13日、『7章にこだわらない』と発言すると…安倍氏は外務省に『(最後の)1分1秒まで立場を貫け』と指示」と報道。「産経」は、「こちらが突っ張ったから、中露は議長声明から非難決議に譲歩したんだろ」との麻生発言や「こちらはすでに第7章を40条(暫定措置)に限定するところまで譲歩しているではないか」という安倍長官の“不快感”発言を紹介しています。

 また、「日経」は、政府に「二兎(にと)を追う筋書きもあった」とし、「拒否権発動で中国が国際的に孤立↓日本の常任理事国入りにつながる国連改革の議論が活発化、というものだ」と明らかにしています。


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