2006年7月18日(火)「しんぶん赤旗」

こちら社会部

違法に未公開株販売

摘発の直後 別会社

同じ顧客名簿使い猛勧誘

元社員が語る実態


 上場する予定もない未公開株や架空の株式投資話を持ちかけ、大金をだまし取る詐欺被害が急増しています。そうした中、違法に未公開株を販売し、今年2月に証券取引法違反で摘発された都内の業者らが、別会社を立ち上げ、同様の販売をくり返しているという訴えが本紙に寄せられました。元社員が語った実態は―。(阿曽 隆)


 青木康夫さん=仮名=はこの春、新聞の求人募集広告で知ったA社(東京都中央区)に事務職で就職しました。

 A社は、約三十人の社員に派遣社員を加えた約四十人。今年の二月末に設立されました。業務内容は北海道帯広市に本社を置く鉱物採掘会社の未公開株を一株三十四万円で販売するというもの。

 「この鉱物は土木建築から医療、健康食品など幅広く用途が広がる」「五年後には百億円を超える売り上げが見込める」などと、社員らは勧誘の電話をさかんにかけていました。A社の一カ月の電話代は百八十万円を超えていました。

 経理事務などを担当した青木さんですが、この会社は何かおかしいと感じました。

 統括本部長と呼ばれる責任者の男性には、「仕事上でわからないことがあればここに電話するように」と言われました。何度か電話や、ファクスなどでやりとりするうちに、電話の相手先は証券業法上の無登録業者で、二月に未公開株の販売で社長らが逮捕された「B社」(東京都中央区)であることがわかってきました。

 そのことを先輩社員に聞くと、「実はここに来ている社員の人らは、ほんとうはB社の人たち」と明かしました。営業課長も「自分たちは二月に摘発された」などと話しました。

 青木さんはいいます。「結局、摘発されたB社の役員や社員たちが会社を変えて同じことをやっているというのが実態でした。営業の電話もB社の顧客名簿を使っているようでした」

 それを裏付けるのはB社の登記簿です。それによると、A社の実質上の責任者である統括本部長はB社の取締役として記載されていました。また同様に営業課長も取締役として記載。営業部長は監査役を務めている人物だったのです。

 同社が未公開株を販売している鉱物採掘会社もうさんくささがつきまといます。

 来年秋にマザーズ上場予定をうたい、「初値で一株五十万円以上は固い」などと販売しています。しかし、同社のホームページで確認するだけでも、北海道内の採掘場については「申請中」、採掘した鉱物を加工するという青森県内の加工工場も、よく見ると「(予定)」と書いてあります。株式公開どころか、実態があるのかさえも疑わしいものでした。

 青木さんは「詐欺まがいの片棒を担いでいるような気がして短期間で辞めました。被害者をこれ以上出したくありません。あやしげな未公開株は買わないように実態を知らせてほしい」と訴えています。


 未公開株 証券取引所および店頭に上場されていない株式。未公開株は譲渡制限をともなうものが多く、入手しても売買することは難しい。最近、「近く上場予定」「値上がり確実」などと未公開株を勧誘・販売し、トラブルになるケースや、詐欺による被害が激増しています。東京都消費生活総合センターには昨年一年間で、前年比七倍以上にもなる六百九十一件の相談が寄せられました。


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp