2006年7月17日(月)「しんぶん赤旗」

列島だより

写真でまちおこし

時代、風景を切り取る


 記念写真や旅行、趣味や観察、研究、記録など、広く使われている身近な文化・写真。時代をさまざまな角度から切り取り表現するその写真を、地域文化の振興や町おこしの核として活用している市町村があります。そのなかから、北海道東川町(ひがしかわちょう)と神奈川県相模原市(さがみはらし)の取り組みを紹介します。


北海道 東川町

全国の高校生が熱戦

地図

 東川町は北海道のほぼ中央に位置し、北海道最高峰・大雪山連峰「旭岳」(二二九〇メートル)を有する人口七千七百人の農業を基幹産業とした町です。

 今では北海道でただ一つ「上水道のない町」としても知られています。大雪山、旭岳に降り注ぐ雪や雨は長い年月をかけ伏流水(地下水)となって大地を潤します。その清らかな水によって「おいしいお米と野菜」などが作られ、町民のいのちと健康を守ってきたのです。

 まさに「大雪の恵み」、自然と共存してきた先人の知恵と努力によって築かれた町です。

風景守る条例

 東川町は一九八五年六月に「写真の町宣言」をおこない、「写真の町条例」を定め、写真を媒体として国際交流と写真文化を通じ、自然と文化の調和する活力と潤いに満ちた町づくりをめざしてきました。

 そのキーワードは三つ。「写真に撮られても良い町―環境に優しいきれいな町を創ろう」「写真に撮られても良いもの―米や野菜、家具などを作ろう」「写真に撮られても良い人になろう―人づくり」です。

 〇二年には、「美しい東川の風景を守り育てる条例」が施行され、昨年は景観法に基づく「景観行政団体」の指定を受けました。

 「宣言」と同時に国際写真フェスティバルを開催し、優れた作品をたたえ海外作家賞、国内作家賞、新人作家賞、特別賞を贈りました。以来今年は二十二回目です。

 写真家が移り住み個展を開き、さまざまなイベントに協力しています。また自然豊かな町へと近隣町村はもちろん、本州からの移住者も増えています。

 十回目からは「開拓一〇〇年」を記念し、「写真甲子園」が加えられました。これからの時代を創る若い人にも東川と写真の魅力を知ってもらい、共に文化の発展と写真写りの良い町づくりを進めようとの思いです。

 今年は全国二百二十四校の写真好きの高校生が応募し、予選を通過した十四校(選手三人、監督一人)が二十五日から四日間、東川町に集まって町営キャビンに泊まり、町民とふれあいながら、本戦での優勝めざし、しのぎを削ります。

 本戦では高校生たちが、東川、美瑛、上富良野の三町を舞台に、町民の働く姿や笑顔と接し、元気と勇気をもらい、シャッターを押し続けます。そのつながりは今も町民との深いきずなとなって交流が続いています。

300人が支える

 これらのイベントは、役場主導から実行委員会主導に移り、女性や子どもなど町民を対象に写真教室等も開かれ、多彩な催しが行われます。それを三百人を超える町民が、裏方で支えています。

 町財政が厳しい折、運営資金の確保や多くの町民の参加など課題もあります。

 「ここまで来るのにかかわった人々の並々ならない苦労がありました。二十年も続いたのは、実行委員をはじめ、町民の協力と理解があったからです」と関係者は振り返ります。そして、今日も町民と共に迎え入れの準備に追われています。

 (東川町議・鶴間松彦)


神奈川・相模原市

発表、教室 市民が主体

地図

 神奈川県の「相模原市総合写真祭フォトシティさがみはら」は、私たちの生活に身近な写真を通し、「新たなさがみはら文化」の創造と発信を実現することを基本に掲げ、二〇〇一年にスタートしました。

 写真は、すぐれた記録性をもち、報道、ドキュメントなど歴史の貴重な証人となっています。豊かな表現力は、芸術・現代美術の表現方法として数多くの作品を生みだし、また誰にでも使える利便性は、記念写真や家族写真など多くの人に愛されています。

 市では、豊かな精神文化が求められる時代に、この写真にスポットをあてました。

アジアを紹介

 写真祭は、新たな時代を担うプロ写真家の顕彰と、アマチュア写真愛好家に作品発表の場を設けるとともに、写真展を中心にシンポジウムやワークショップなど、さまざまなイベントを組み込んだ市民参加型の文化事業に位置付けています。

 第二回の写真祭からは海外にも目を向け、とくに日本とさまざまな分野で密接な関係にあるアジア諸国を対象とした「さがみはら写真アジア賞」を創設し、毎年アジアの優れた写真家の紹介と文化交流を続けています。

面白さ子にも

 また、市内の小学校を舞台に、ボランティアの人たちが、次代を担う子どもたちに写真の持つ面白さや魅力を指導する「子ども写真教室」を開いています。自分のとっておきの一枚を持って誰でも参加できる「私のこの一枚写真展」を実施しています。これも市民の人たちを中心に、気軽に参加できる写真展示の場として好評です。

 こうしたフォトシティさがみはらの過去五年にわたる活動が評価され、「相模原市総合写真祭フォトシティさがみはら実行委員会」は、社団法人日本写真協会が実施している二〇〇六年度「日本写真協会賞・文化振興賞」に選ばれました。

 相模原市はことしと来年にかけて、津久井地域と合併することになっています。都市と自然が融合する新たな市に変わります。相模原市としての新たな歴史の始まりとなるいま、写真の持つ「記録、表現、記憶」といった特性を多くの人が身近に感じることができる市民主体の事業として、今後さらに愛され、親しまれる写真祭となることを目指しています。

 (フォトシティさがみはら実行委員会事務局・向笠健児)


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