露鵬に出場停止３日

協会は指導に本腰を

　角界の歴史に汚点を残す異例の事態となりました。露鵬が土俵上の怒りから、写真記者を殴打するなど、あってはならないことです。

　きっかけは立ち合いでの露鵬の張り手に対し、千代大海が「何だお前、こら」とどう喝したことでした。敗れた露鵬は土俵下で、大関とにらみ合った末、一礼もしないで土俵を後にしました。

　怒りは収まらず、風呂のガラス扉や報道陣に八つ当たり。このような態度をとれば、力士の資格が問われても仕方ありません。

　露鵬は、実力をつけてきましたが、心の成長を置き去りにしてきたのではないでしょうか。失った信頼を回復することは容易ではありません。

　露鵬を見いだした、元横綱大鵬の納谷幸喜・相撲博物館館長は「元師匠として私も十分ではなかったと思い、残念でなりません。これから一番一番、どういう態度で臨むのかが問われています。露鵬は己とのたたかいに勝たなければいけない」と厳しく指摘します。

　今回の事態の背景には、力士への指導・教育の問題があります。

　スポーツはけんかではありません。ルールに基づいて、互いの持てる力や技を競い合うものです。勝負の後に、憎しみの感情が残るのはスポーツとは言えません。

　相撲は体がぶつかり合う格闘技です。当然、勝負の前には極度の緊張感があり、相手に勝つために気持ちは高ぶり、興奮状態になります。

　しかし、正々堂々とたたかった後は審判に従って、結果を誠実に受け入れるべきものです。

　協会が普段から、こうした問題に対して、どのような指導をしてきたのかが問われています。

　力士への指導責任は師匠に任されています。協会は今回の事態を受けて、各師匠に力士への指導を徹底するよう通達を出しました。

　しかし、各部屋の指導だけでは限界があります。師匠任せにせず、協会が本腰を入れる必要があるのではないでしょうか。（武田祐一）