2006年7月17日(月)「しんぶん赤旗」

北朝鮮非難 国連安保理決議

日本政府 真しな努力つくしたか

“一致した対応”いいながら

外交解決遠ざける動きも


 国連安保理が十五日(日本時間十六日)に全会一致で非難決議を採択した北朝鮮のミサイル発射問題―。日本共産党は、志位和夫委員長の十六日の談話でも指摘しているように「国際社会の対応としては、国連安保理が分裂することなく一致した行動を行うことが、何よりも大切」と主張してきました。安倍晋三官房長官は決議採択を受け「国際社会の断固たる意思を示すことができた」とする談話を発表しましたが、日本政府はそれにふさわしい行動をとってきたのでしょうか。(榎本好孝)


 「(北朝鮮の)金正日(朝鮮労働党総書記)に感謝しないといけない」

 北朝鮮のミサイル発射について麻生太郎外相は八日の講演でこう述べ、韓国の政界、メディアから「日本政府はミサイル発射を北東アジアで軍事・外交的影響力を拡大する絶好の機会にしている」(中央日報十一日付)などと一斉に批判を浴びました。

“中国孤立”狙う

 同じ日の講演で麻生外相は、北朝鮮のミサイル発射に関する国連安保理決議案について「(中国など)拒否権を持っている国の顔色を見ながらやるのはおかしい。日本は譲らない。最後まで突っ張る」と強調しました。

 中国やロシアに拒否権を発動されても、あくまで日本などが提出した決議案をごり押しし、その結果、安保理が分裂しても構わないという強硬な姿勢を示すものでした。

 日本政府はその後も、安保理の一致した行動のために真摯(しんし)な外交努力を尽くすことが求められていたにもかかわらず、それを行わないで一貫して強硬な姿勢をとり続けました。

 その裏には「中国が拒否権を行使すれば、国際社会での孤立ぶりを明確にできる」(「中日」十二日付)という“中国はずし”“中国孤立化”の思惑があったと指摘されています。国際社会の一致した対応と言いながら、実際にはそれとは正反対の動機が働いていたというのです。

 「朝日」九日付は「中ロが反対する制裁決議案提出を日本が主導したのは、首相官邸の強い意向からだ。『北朝鮮の仲間だから、反対するのか』(政府高官)とあぶり出す戦術」だとし、「郵政民営化法案の反対組を『抵抗勢力』とみなした手法に似る」とも指摘しました。

軍事対応に言及

 こうした日本政府の行動には、自民党内からもすでに「中国をはずしてもいいんだということになると、これから安保理がどういうふうに機能するのかという問題になってしまうので、やはりそういうやり方はまずかった」(石破茂元防衛庁長官、十六日のNHK討論番組)という批判の声が上がっています。

 北朝鮮のミサイル発射問題をめぐっては、安倍官房長官や額賀福志郎防衛庁長官ら重要閣僚が「敵基地攻撃」能力の保有という軍事対応の問題にまで言及しました。国際社会が全力を挙げている問題の外交的解決を遠ざけようとする日本外交のあり方は根本から問われなければなりません。 

決議をめぐる動きと日本政府の対応

【2006年7月】

  5日 北朝鮮がテポドン2号など弾道ミサイル7発を発射

     日本が国連憲章第7章に基づく対北朝鮮制裁決議案を国連安保理に提示

  6日 中国が制裁条項のない議長声明案を提示

  7日 日米などが制裁決議案を安保理に提出

     安倍晋三官房長官が記者会見であくまで日米などの決議案の採択要求

  8日 麻生太郎外相が講演で「最後まで突っ張る」と主張

  9日 額賀福志郎防衛庁長官が「敵基地攻撃」能力の保有は「当然」と言明

 10日 安保理、制裁決議案の採決先送り

     中国の武大偉外務次官が訪朝。6カ国協議復帰を説得

     安倍官房長官が記者会見で「敵基地攻撃」能力保有の「検討は必要」と表明

 11日 フランス、最初に議長声明、その後に決議案を採択する「2段階」案に言及

 12日 中ロが制裁なしの非難決議案を安保理に提示

     中国の王光亜国連大使、制裁決議案採決なら「拒否権行使」と明言

 14日 日米が制裁決議案の「強制措置」部分を「暫定措置」へ修正

     英仏が「7章」抜きの調停案を提示

     小泉純一郎首相が記者団との懇談で「7章」の明記を求める「日本の基本方針は変わらない」と発言

 15日 安保理、全会一致で決議採択


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