2006年7月13日(木)「しんぶん赤旗」

「核兵器は違法」 国際司法裁勧告10年

国際会議 各国で進む運動 交流


 核兵器の威嚇と使用を「違法」とした国際司法裁判所(ICJ=本部ハーグ)による勧告的意見の公表から十年を記念する国際会議が六、七の両日、百二十人の法律専門家や平和活動家らが参加し、ブリュッセルの欧州議会で開かれました。


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(写真)国際司法裁「核兵器違法」勧告10周年を記念して開か れた国際会議=7日、ブリュッセル(浅田信幸撮影)

 会議を主導したのは「核兵器に反対する国際法律家協会」(IALANA)で、反核平和団体の世界的ネットワークである「廃絶二〇〇〇」も共催に加わりました。

 核兵器をめぐる国際法の理論上、実践上の問題が検討され、核兵器の威嚇、使用を国際違反としながらも、「例外」として「自衛の極端な状況では」結論を下すことができないとした十年前の「勧告的意見」の限界を超え、世界での運動が広がっていることが確認されました。

 反核団体の代表からは「法的な闘争と市民の反核運動を結びつける」必要性が強調されました。勧告の歴史的な意義が改めて強調され、核兵器の違法性を改めて確認。核兵器の配備、貯蔵まで含めた違法性を問うたたかいが北イタリアのアビアノ米軍基地やベルギーのクライネ・ブローゲル米軍基地などをめぐって進んでいる例が紹介されました。

 またICJ勧告が求めた核軍縮交渉の誠実な実施については核保有国の「怠慢」が厳しく批判され、この点での法的追及の可能性を探る方向が打ち出されました。

 会議には、広島市の秋葉忠利市長も出席し、二〇二〇年までのできるだけ早い時期に核兵器の禁止をめざす運動を進めるよう呼びかけ、参加者から大きな拍手を受けました。

 ICJ勧告の採択に直接かかわったクリストファー・ウィラマントリ元ICJ判事は、核兵器が集団虐殺や環境への損害、不必要な損害、将来の世代にわたる損害を引き起こすことを挙げ、核兵器は「国際慣習法と相いれない」と発言。ICJ勧告を一歩進め、国際法上、あらゆる核兵器使用が違法だとの見解を示しました。

 多くの参加者が核兵器の絶対的な違法性を主張する同元判事の見解に共感するとともに、「北大西洋条約機構(NATO)の違法な核兵器を撤去させる運動をさらに前進させていきたい」(ベルギーの平和活動家ハンス・ラメラント氏)など、核兵器の違法性の宣伝を通じて今後の核廃絶の運動を大きくしていく決意の表明が相次ぎました。

 核兵器に反対する国際法律家協会の副会長として会議に出席した浦田賢治・早稲田大学名誉教授は、「ICJ勧告は法的な原則を確認したもの。原則を強めるか弱めるか、それは運動の発展にかかっている」と語りました。(ブリュッセル=浅田信幸、岡崎衆史)

勧告的意見と核兵器廃絶の流れ

 一九九六年七月八日に出された国際司法裁(ICJ)の勧告的意見は「二つの原則」と「一つの例外」を確認しました。「二つの原則」は、「核兵器の威嚇または使用は、一般的に、武力紛争に適用される国際法、とりわけ人道法の原則および規則に反する」とし、「厳密かつ効果的な国際管理の下における、あらゆる点での核軍縮に導かれる交渉を誠実に実行し、完結させる義務がある」としました。

 これに対し、「一つの例外」は、「国家の存亡が危険にさらされている自衛の極端な状況において、核兵器の威嚇または使用が合法であるか、違法であるかについて、確定的に結論をくだすことはできない」としています。

 こうした問題点を残しながらも、ICJ勧告は国際的な反核世論の発展に貢献してきました。政府レベルで核兵器廃絶を求める声が非同盟運動を超えて広がり、一九九八年にスウェーデン、アイルランド、ブラジル、メキシコ、ニュージーランド、エジプト、南アフリカの非核保有国七カ国により新アジェンダ連合が結成されたこともその一つです。

 各国での反核運動を背景に二〇〇〇年の核不拡散条約(NPT)再検討会議で、勧告には「痛痒(つうよう)を感じない」と表明していた米国を含む核保有国も「核兵器廃絶の約束」をせざるをえませんでした。

 イラク戦争前に、国連監視検証査察委員会(UNMOVIC)の責任者であったブリクス氏や、アナン国連事務総長ら国際機関のトップに立つ人々が公然と核兵器の廃絶を主張するにいたっており、ICJが確認した積極面は現在にもその効果を及ぼしています。(ブリュッセル=浅田信幸)


日本の憲法9条支持

自衛隊海外派兵に懸念

 核兵器を違法とした国際司法裁判所(ICJ)の「勧告的意見」採択十周年を記念してブリュッセルで開かれた学者と平和団体の共同の国際会議で六日、日本の憲法九条を支持し、改悪の動きを批判する声が出ました。

 「核政策の概念と自衛」と題した分科会で憲法九条に触れた発言を受け、議長を務めたロナルド・マッコイ核戦争防止国際医師会議(IPPNW)共同議長は、「九条の改定には反対だ」と表明。憲法九条を支持し、改定の動きを批判しました。

 これに先立ち、核兵器に反対する国際法律家協会のピーター・ワイス氏は、ICJの勧告が一般に核兵器を違法としながら、「自衛の極端な状況において、確定的に結論を下すことはできない」としていることとの関連で、日本は、軍隊の保有や自衛以外の交戦権を否定する憲法九条があるにもかかわらず、自衛隊をイラクに派兵していると発言しました。同氏はこうした動きに懸念を表明しつつ、「自衛」の概念が都合よく使われる可能性を指摘しました。

 同氏は現在のイラン核開発問題にも触れ、「米国は核も含む軍事的選択肢を留保している。自衛が侵略の口実にされている」と米国の姿勢を批判しました。(ブリュッセル=岡崎衆史)


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