2006年7月11日(火)「しんぶん赤旗」

防衛長官ら“敵基地攻撃の能力必要”発言

外交的解決遠ざける


 北朝鮮の弾道ミサイル発射問題に関連し額賀福志郎防衛庁長官が、「敵基地攻撃」能力を日本が保有することを当然視する発言を行い、安倍晋三官房長官も「検討は必要」と述べました。重要閣僚から軍事的対応を可能にする発言が相次いだことは、日本政府自身が目指している問題の外交的な解決に逆行するものです。(榎本好孝)


国際社会は解決に努力

 北朝鮮による弾道ミサイル発射は、事前通告を定めた国際法上のルールや、ミサイル発射凍結を確認した「日朝平壌宣言」(二〇〇二年九月)などの国際的な取り決めを無視し、北東アジアの平和と安定を脅かす、無法行為です。

 これに対して国際社会は、問題を外交的に解決するために懸命の努力をしている最中です。米国も「外交的に対処する」(ブッシュ大統領)と言明しています。

 日本政府も、経済制裁を含めた「厳しい措置をもって臨む」としつつ、北朝鮮が「日朝平壌宣言」に立ち返り、同国の核問題をめぐる六カ国協議に早期かつ無条件に復帰するよう強く求めています。これは、安倍官房長官自身の声明(五日)で明らかにした政府の公式の方針です。

 そういう時に、「敵基地攻撃」能力の保有という北朝鮮への軍事攻撃につながる議論を閣僚が公言することは、北朝鮮の無法行為をいっそう助長し、六カ国協議の早期再開や外交的解決を遠ざけることになります。

 額賀防衛庁長官は「敵基地攻撃」能力の保有の理由について「国民を守るため」と強調しています。

際限のない軍拡競争生む

 しかし、額賀長官らが持ち出している「敵基地攻撃」能力の保有をめぐる議論は、「(日本が)被害を受けるまで何もしないわけにはいかない」(麻生太郎外相)と言明しているように、実際の被害はないのに、ミサイル発射への着手などを理由に「敵基地」に攻撃を加えるというものです。「自衛」を口実にした先制攻撃論です。

 それは、相手国の新たな軍事的対抗措置を引き出し、際限のない軍備拡張競争を生むものであり、アジア地域の緊張をますます高めることになります。

 実際、額賀長官は就任(昨年十月)前には、「敵基地攻撃」を可能にするため、米国がイラク戦争やアフガニスタン戦争で先制攻撃の第一撃に使った巡航ミサイルの導入まで検討課題だと繰り返し主張していました。

 もし先制的にミサイル発射基地を破壊すれば、本格的な武力紛争、戦争に発展する危険も十分に考えられます。それは日本の国民や国土を守るどころか、はかりしれない被害を生み出すことになりかねません。

 額賀長官らの発言は、これまでの小泉首相の言明にも反するものです。首相は「(相手国の)攻撃意図が分かった時に相手をたたく攻撃兵器を持ったらどうかという議論は承知しているが、政府としてそういう考えはない」と国会で明言しています。(〇三年三月二十八日、参院予算委)

 今、日本政府に必要なのは軍事的対応の議論ではなく、外交的解決に全力を挙げることです。


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