2006年7月8日(土)「しんぶん赤旗」

ワールドリポート

米大陸横断平和行進から20年

“同窓会”で200人再会

“核兵器廃絶”いまも草の根に


 米ソの核軍拡競争が続いていた一九八六年、「核兵器廃絶」を共通の目標に掲げた「大平和行進」が西海岸のロサンゼルスから首都ワシントンまで八カ月半かけて米大陸を横断しました。今年はそれから二十年です。六月末、ワシントンから南西に下ったバージニア州ロートンのキャンプ場で「同窓会」が開かれ、当時行進に参加した人たち約二百人が集いました。(ワシントン=山崎伸治 写真も)


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(写真)大平和行進の「市長執務室」の看板を掲げるダイアン・クラークさん(左)と夫のビルさん=6月24日、バージニア州ロートン

 東海岸を襲った豪雨にもかかわらず、参加者の中には二十年前の行進の時と同じように、テントを張って四泊五日を過ごした人たちがいました。その一つに「市長執務室」という看板がありました。大行進の「市長」を務めたダイアン・クラークさん(64)のテントです。

日本代表団から渡された横断幕

 記者(山崎)がクラークさんに会うのは十五年ぶり。「二十年前、(核軍拡にたいして)『もうたくさんだ』といって立ち上がった人たちと一緒になれたことを誇りに思っています」と語る姿に時の流れは隠せませんが、エネルギッシュなところはまったく変わりありません。

 テントの中にあったプラスチックの整理箱には当時の思い出の品々がありました。大行進に参加した日本の代表団から手渡された横断幕もきちんと保管されていました。

 大行進の道のりは平たんではありませんでした。ロサンゼルスを出発したものの、二週間後に資金難に直面して呼びかけ組織が解散。残った参加者が組織と計画を立て直して継続します。そのとき、ゴミ収集係の「功績」をかわれて「市長」に選ばれたのがクラークさんでした。

 「強いアメリカ」を掲げるレーガン政権下で、核軍拡を宇宙にも広げる「スターウォーズ計画」(SDI=戦略防衛構想)や、核軍拡によって相手の核攻撃を抑止するという「相互確証破壊」(MAD)という核戦略が議論されていた時期でした。

 ニューヨーク州の小学校の先生だったクラークさんは、住んでいる地域が核廃棄物で汚染されていることを知り、「核エネルギーや核兵器を使用することの負の側面を訴えよう」と参加したと言います。

 大行進はネバダ砂漠、ロッキー山脈を越え、中西部からシカゴ、ニューヨークの大都市を経てワシントンまでの約六千キロを踏破しました。

 「ワシントンでは、レーガン大統領も政府のだれも、私たちには会いませんでした。でも行進の沿道で参加者の一人ひとりがそれぞれ数千人の人たちと対話し、自分たちの国のことや『悪の帝国』と呼ばれたソ連のことを話し合いました。全米からさまざまな人が集まり、自分たちのことを全部自分たちでやって、平和に過ごしたことは大きかったと思います」と振り返ります。

 クラークさんたちは「同窓会」の一日、ワシントン近郊にある人口約千人の小さな町、ガレット・パークを二十年ぶりに訪問しました。

当時植えた木いまもすくすく

 大行進は行く先々の自治体と交流しながら、進みました。ガレット・パークもその一つです。交流の記念に当時植えたトウヒ(英語名・スプルース)が「平和の木」として、いまもすくすくと育っています。

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(写真)20年前に植えた「平和の木」とシャーウェイカー町長=1日、メリーランド州ガレット・パーク

 「町の住民がずっと世話をしてくれているんですよ」というのは、町長のカロリン・シャーウェイカーさん(65)です。

 「平和の木」は、町の公園の一角、かつてこの町の住民だった平和活動家にちなんでつくられた庭にあります。植えた時には一・五メートルほどの高さだったトウヒが、いまでは見上げるほどに伸びています。

 「植えたときの写真がありますが、今も存命の人は三人しかいません。ですから記念板を立てることを計画しています」

 四十年間務めた高校教師を退職し、三年前から町長に就任したシャーウェイカーさんは、ベトナム反戦運動に参加しました。「一九六七年の秋、ペンタゴンで兵士の銃に『花をどうぞ』といって花を一輪さす抗議行動をやりました」

 大平和行進から二十年のいま、米国はイラク占領を継続しています。ベトナム戦争当時を思わせる泥沼化のなかです。

 クラークさんも「状況は厳しいと思います」とけっして楽観していませんが、平和の火をつぐ思いを新たにしています。

 「平和の木」がいまも大切に育てられているように、核兵器廃絶と世界の平和を訴えた大平和行進の精神は、いまも米国の草の根に息づいています。

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