2006年7月5日(水)「しんぶん赤旗」
いま地方で
小規模農家 「香川産麦作れない」
讃岐うどんの地直撃
農政「改革」で助成打ち切り
讃岐(さぬき)うどんで知られる香川県は、麦づくりが盛んです。オーストラリアからの輸入小麦が主流となるなか、「讃岐うどんは讃岐の麦で」と、県が八年かけて開発したうどん用小麦「さぬきの夢2000」も年々作付面積を増やしています。そんななか政府は、一部の大規模農家や法人に支援を集中し、小規模農家への助成を打ち切る農政「改革」関連法案を成立させました。「補助金なしでは小麦は作れない」と農家の間に不安が広がっています。(佐藤恭輔)
「夢2000」を使う高松市内のうどん店のお客に聞きました。「食品はなるべく国産を選んでいます。少し遠いけどこの店で食べます」(七十歳女性)。うどん大好きという五十歳の女性は「輸入品は残留農薬が心配です。香川は『うどんの県』ですから、県産を増やしてほしい」。
認定農家は3割
小規模農家が多い香川県では農政「改革」法により、助成対象の「認定農家」となる基準が国の基準より緩和され、経営面積二・六ヘクタール以上、または農業所得三百万円以上(市町により異なる)などとなっています。しかし、現状で「認定農家」になれる麦作農家は約三割だけです。認定されない農家は集落営農組織や特定農業団体などに参加しなくては、助成が受けられません。
麦作の盛んな高松市香川町浅野では、単独では誰も「認定農家」になれず、集落営農組織をつくる予定です。
二ヘクタールで米・麦を作る男性(73)は「ここの農家はだいたい七十前後が『担い手』。国が考えるように大規模中心でできるところは全国でも限られている。生計が立てられないのに誰がやるのか」。
香川町が合併されるまで三十年以上同町で農業委員を務めた男性(77)は「集団化しても五年、十年すればどうなるのか。やめる人が出てくれば残った人でカバーするが、手が回らない所は荒れてしまい、地域全体が壊れてしまう。農業で生活できなければ後継者は育たない」と不安げです。
「夢2000」で作るうどんは香りがよく、こしが強いのが特徴です。一方、製粉がしにくく、生地が安定しないなど、手間がかかる面もあります。大規模農業でつくる輸入の小麦より値段が高くなります。
三木町で農園を営む男性(54)は小麦一・七ヘクタールをはじめアスパラや米などをつくる認定農家です。「小麦六十キロで九千円ですが、三分の二以上が補助金です。大きな補助金がなければ再生産する意欲がおきません。輸入小麦はポストハーベスト(収穫した後の農薬処理)の心配もある。自給率向上、食の安全・安心確保に逆行しています」
続けたい人支援
JA香川県では、小規模農家が助成を受けられるように、「一支店一農場」構想を立ち上げ、農家の組織化を推進・支援しています。宮武浩一農産部長(50)は「一つの集落では集落営農組織の要件となる経営面積を確保できない地域が多い。続けたい人が続けられるように手助けしたい」。また新規作付けには助成がなく、「別途支援策がなければ自給率向上は見込めません」と言います。
農家への支援策について日本共産党の白川よう子県議は言います。「国が一律に支援対象を限定するのは農家の実態に合わず、集団化しても安定して続けられる保証はありません。農業を続けたい人、新たに農業を始めたい人はみな担い手として支援すべきです。小麦農家への支援を国に要望し、県にも独自の対策を求めたい」
農政「改革」 「品目横断的経営安定対策」の導入が中心です。米、麦、大豆などについて品目別に行っていた価格安定対策を廃止し、原則として個人四ヘクタール(北海道では十ヘクタール)以上、集落営農二十ヘクタール以上などの要件を満たした大規模農家・法人などに助成を集中します。農水省の試算でも、米・麦・大豆などの販売農家のうち七割、農地面積の五割は助成されなくなります。

