2006年7月5日(水)「しんぶん赤旗」

原子力空母を考えるQ&A ◇下◇

首都圏 玄関に“原発”


 Q:米国は、「過去五十年間、米原子力艦船は一度も事故を起こしたことはない」と説明していますが、本当ですか。

 違います。

 米国の研究者の報告書によると、一九八〇年代までに公開された情報だけでも、米海軍の核事故・事件が三百件以上発生しています。

 一九九九年十一月三十日には、空母ジョン・C・ステニスの原子炉が二基とも緊急停止する事故が発生しました。ところが米国は「原子炉の機能は失われていない」として、事故とみなしていません。

 日米両政府は、「原子炉に関するトラブルはしかるべく報告する」と説明していますが、これも偽りです。ステニスの件は市民団体やマスコミが先に暴き、後からやむをえず発表したものです。

 また、原子力空母の構造は軍事機密のベールに覆われています。日本政府は「原子力空母は安全だ」と繰り返し説明しているのに、原子力空母の素材や厚さなどの技術的な情報は「日本政府として承知し得る立場にない」との見解です。

 日本政府や専門家による、艦内の立ち入り検査もできないため、米側の一方的な発表をうのみにするしかないのです。

 Q:原子力空母が事故を起こしたらどのような事態が想定されますか。

 横須賀に原子力空母を配備することは、三千万人の人口を抱える首都圏の玄関口に原子力発電所を置くようなものです。

 仮に原子力事故が発生した場合、半径八キロ以内は全員死亡、十三キロ以内で半数が死亡に至り、放射能は関東全域に広がるとの試算もあります。

 原子炉の事故が起こらなくても、汚染された冷却水が放出されたり、原子力空母のメンテナンスを行う労働者などが被ばくする危険があります。

 実際、米国で造船会社の労働者が被ばくした事故が発生しています。

 Q:日本政府はどのような姿勢ですか。

 政府は横須賀への空母配備は「おおむね三年」と説明し、七三年に空母を受け入れました。

 ところが、政府は約束をほごにし、日米地位協定上も支払い義務のない「思いやり予算」で基地整備や乗組員の住宅などを次々に建設し、日本を世界で唯一の米空母の海外母港にしつづけてきました。

 原子力空母の配備も米国いいなりで受け入れを決め、数十億円とみられるしゅんせつ工事費を、〇七年度予算に盛り込む計画です。

 さらに、米会計検査院(GAO)の九八年の報告書では「横須賀を原子力空母の母港にするためには、原子力に対応できる補修施設と、関連したインフラの建設が不可欠」と指摘しています。核関連施設の建設を要求されることも考えられます。

 空母の維持には莫大(ばくだい)な費用がかかります。政府が税金投入をやめれば、それだけで米軍は横須賀で空母を維持できなくなってしまいます。(おわり)


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