2006年7月5日(水)「しんぶん赤旗」

主張

グアンタナモ

テロ理由の無法は許されない


 アメリカがアフガニスタン戦争以来、「テロとの戦争」で「敵の戦闘員」だとして拘束した各国市民をグアンタナモの米軍基地(キューバ)に収容しつづけ、法・条約の適用外においてきたことに、国際的な批判が高まっています。欧州議会は収容所の閉鎖を要求し、ブッシュ米大統領は欧州連合(EU)各国との首脳会議で釈明に追われました。

 先週末には、米最高裁が収容者を裁く米特別軍事法廷の設置を違法とする判決を下しました。「テロとの戦争」を口実に法を無視するやり方は、米国内でも許されなくなっています。

法の適用なく虐待も

 グアンタナモの収容所は、キューバに居座る米軍基地のなかにあり、いまも、約三十五カ国の四百五十人を収容しています。

 収容者は身体を拘束されるばかりか、虐待、拷問を受けていると、関係者や各国政府、国際機関、国際人権擁護団体などがくりかえし弾劾してきました。最近では、抗議のハンストをしていた三人の収容者が自殺したとされる事件が起きました。

 米国が拘束したなかには、あきらかな非戦闘員もいます。それもすべて「敵の戦闘員」だと勝手に決めつけながら、法の裁きも捕虜の取り扱いを定めたジュネーブ条約にもとづく保護もうけられないようにしてきました。これは無法行為そのものです。

 米政府は、テロ犯罪の容疑者であれば、適法な裁判を受けさせなければならず、戦争捕虜には、ジュネーブ条約にもとづく処遇をしなければならない立場にあります。いずれの道も閉ざして収容者を超法規的「ブラックホール」(人権擁護団体)のもとにおくことは許されません。

 米政府は、裁くのは米国の特別軍事法廷だけだとし、そこで訴追される収容者は一般の刑事裁判とちがい、証拠に接することも上告することもできないようにしています。

 米最高裁は、こうしたやり方が統一軍法典などの国内法にもジュネーブ条約などの国際法にも違反すると判断しました。「ブッシュ大統領はテロとの戦争を法の枠内でおこなうやり方を見いだすべきだ」(ニューヨーク・タイムズ紙)という声が米国内でも大きくなっています。

 テロをなくすためには、厳正に法にもとづいた国際的な協力がきわめて重要です。米国だけが法に従わず一方的行動をとり続けることは、その共通土台を掘り崩すものであり、各国共同の努力に重大な障害をつくりだす点で重大です。

 「諸国政府がテロに対するに、常に法に立脚することが決定的に重要である。不適切な例外をつくりだすようなことは、基本的権利をむしばみ、政府の行動自体の適法性を突き崩す」という国連人権高等弁務官発言(六月二十三日)は、米政府に向けられた厳しい警告です。

国際的協力に不可欠

 ブッシュ大統領は、米・EU首脳会議で、テロとのたたかいを「人権法、難民法、国際人道法を含む国際的義務にのっとって」すすめるとの宣言に同意しています。最高裁判決については、「深刻に受け止めている」とのべています。これから問われるのは実際の行動です。

 米政府は、内外の批判に応えて、グアンタナモ収容所を閉鎖し、指摘されている収容者への拷問・虐待の根を絶つべきです。そうすることは、テロをなくすために不可欠の国際的協力にとって避けられません。


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