2006年7月4日(火)「しんぶん赤旗」
こちら社会部
設置しないと罰金?!
火災警報器 押し売り
「義務化」悪用、被害が急増
「お宅の寝室に火災警報器が設置されていますか?」――こんな電話や訪問販売をうけて、住宅用の火災警報器(報知機)を高額な費用で強引に押し付けられたという被害相談が、国民生活センターなどの消費者相談窓口に相次いでいます。(宇野龍彦)
消防法と各地の条例改定で、六月一日から新築の戸建住宅や共同住宅で煙感知式の火災警報器の設置が義務付けられたことを悪用したもの。新手の悪質訪問販売に、消防署や消費者センターは「同様の手口の増加が予想され、注意してください」と呼びかけています。
最高被害312万円
国民生活センターによると、つぎのような相談が寄せられています。
「介護訪問している高齢者宅に高額な訪問販売があった。強引な勧誘にしかたなく契約した」「火災警報器の設置が義務化されたので取り付けが必要だ。つけなければ罰金をとられるといわれ、業者と高額な契約をしてしまった」「電話機の点検と言って訪問してきた業者と、火災警報器の設置を契約した。警報器のところでたばこを吸ったが、反応がなく、だまされたと思う」など。
同センターへの相談で、最高被害金額は約三百十二万円にも。「アパートを持っている方だった」といいます。
市販の火災警報器には熱感知式と煙感知式とがあり、新築住宅に設置が義務付けられたのは、煙感知式。場所は、寝室や、寝室のある階への階段など。東京都や名古屋市などでは台所への設置も義務付け、台所などは煙感知式だと誤報がでる可能性が高くなるので、熱感知式を推奨しているケースもあります。
乾電池を使うタイプは、ホームセンターなどでは五千円前後で販売されていますが、悪質訪問販売では数万円以上の高額で契約させようとします。
消防署員を装い
既存の住宅への義務化は二〇〇八年以降で、自治体によってまちまちです。新築住宅では建築確認申請が受理されない仕組みになっていますが、既存住宅で罰則規定はありません。悪質業者は、ただちに設置しなければ罰金があるかのような虚偽の説明をしたり、消防署員のような服装で強引に勧誘するのが手口です。
国民生活センターによると、二〇〇四年に三十二件だった被害の相談件数は、二〇〇五年には五倍近い百五十五件に急増。ことしは六月下旬までにすでに三十七件あり、これからますます被害相談が増えると予想されています。
一足早く昨年十月一日から、新築住宅に火災警報器の設置を義務付けたのは東京都です。東京消防庁によると、昨年七月から八月にかけて、悪質訪問販売の被害約三十件が集中。同庁は「消防署や自治体が、火災警報器の販売をやることはなく、委託することもない。設置に資格も必要ない。あやしい話には応じないようにしてほしい」と注意を喚起しています。
国民生活センターは、訪問販売による火災警報器の契約をした場合、解約のためのクーリングオフ制度が利用でき、「不安に思ったら、もよりの消費生活センターへ相談しましょう」とよびかけています。

