2006年7月3日(月)「しんぶん赤旗」
米軍再編 基地の街から
空自・米軍一体化へ着々
今も騒音耐え難いのに
宮崎・新田原基地
「完全かつ迅速な実施」。小泉首相はブッシュ米大統領との首脳会談共同文書で在日米軍再編の日米合意についてこう確認しました。米空軍嘉手納基地(沖縄県)や海兵隊岩国基地(山口県)などの戦闘機の訓練移転、「緊急時の使用」が打ちだされている航空自衛隊新田原(にゅうたばる)基地の地元、宮崎県新富町では――。(山本眞直)
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ギーン、バリバリッ。午後六時すぎの新富町のJR日豊線・日向新富駅に近い住宅街。自衛隊のF15ジェット戦闘機が一瞬、体が硬直するほどのすさまじい爆音をまき散らしながら上空で急旋回をくりかえします。
町のほぼ中央部に駐屯する新田原基地の所属機です。空自の主力戦闘機であるF15のパイロットを養成しています。新富町の上空で激しい飛行訓練を連日実施しています。
断固反対を決議
「慣れることもありますが、いつも平気ということではありません。自衛隊機の騒音にはがまんにがまんを重ねている」と話すのは新町地区の中西和美区長(65)。
東西方向に向く新田原基地滑走路の延長線上などの十三地域は「騒音激甚地区」です。中西さんは同地域の区長でつくる「新田原基地周辺騒音激甚地区区長会」の会長でもあります。
“平気ではいられない”というのは、自衛隊機が町の上空でエンジン出力を最大にして、急上昇態勢にはいったときなどです。
「そのときはもう家の中でも、テーブルをはさんだ家族の会話も聞き取れない。つい大声になるが、飛行機が飛び去ったあとも大声のままなのにふと気が付き、自分でもおかしくなったのではと思ってしまいます」
中西さんら「騒音激甚地区区長会」と新富町は「これ以上の騒音は耐えられない」と米軍の訓練移転に断固反対を決議。再編案の実施を確認した閣議決定(五月三十日)後もその姿勢は変えていません。
下士官との交流
一方、自衛隊は――。
「在日米軍との相互理解と友好を深めることを目的に、三月に在日米軍の下士官との交流を実施した」。航空自衛隊新田原基地の広報担当(三尉)は本紙の取材にこう回答しました。
「下士官交流」は三月一日から十日間の日程で米空軍嘉手納基地の下士官が新田原基地を訪問。自衛隊戦闘機などの整備や補給作業を「研修」したといいます。
新田原基地の隊内紙は、交流を同行取材した横田基地の米軍放送網(AFN)が「全世界に放映」したと記し、下士官交流の注目度の高さを強調しています。
同交流は今回で二度目。現場レベルでの「日米軍事一体化」の“定着”ぶりを印象付けています。
再編案では新田原基地と築城基地(福岡県)に、海兵隊遠征部隊の「緊急時の使用」も盛り込んでいます。再編協議で強調された「新たな脅威や多様な事態に対処する」ためで、“米軍有事”の作戦・出撃基地化です。
同時にこうした役割・任務・能力を実現するためとして「技術革新の成果を最大限に活用すること」を強調しています。新田原基地ではこの面でも“先行投資”がされています。
四月にはF15戦闘機などの機体を、自動X線撮影で非破壊検査ができる新型のX線検査格納庫を完成させています。
爆音ものすごく
新田原基地が見渡せる南門付近で航空機マニアの男性が言いました。「米軍のF15は実戦配備だから燃料タンクもつけ、ミサイルも装備しており重量も自衛隊機よりもはるかに重く、その分、爆音もすごい」「早ければ九月にも訓練移転が始まる。そのための駐機場の整備も始まっているようだ」
事実、基地の中を建設作業用のダンプカーがひっきりなしに走りまわっています。再編案は米軍の訓練移転、海兵隊の緊急使用のための駐機場や格納庫などの整備を打ち出しています。
基地の回答はこうです。「施設整備など再編の具体的な内容については、現段階では当基地は承知していない」