2006年7月2日(日)「しんぶん赤旗」
日米同盟どこへ (中)
「孤立」の中で「友情」演出
「この五年間、私が総理大臣に就任して以来、世界の首脳でブッシュ大統領ほど心に感じ、友情を感じ、信頼できる、協力してきた首脳はない」―六月二十九日のホワイトハウス到着式典で小泉首相は言いました。
イラク占領をめぐって欧州諸国の同盟国からも冷たい反応が返り、国内の支持率も30%台で低迷するブッシュ大統領に対して、ここまで「信頼感」を表明する世界の首脳は、いまや小泉氏しかないでしょう。
■「支援」拡大
「小泉氏は確信を持って、ブッシュ氏に『これは対テロ戦争だ』と言った数少ない世界の首脳の一人だった」―前米国家安全保障会議アジア上級部長のマイケル・グリーン氏は、二〇〇一年九月の同時多発テロ事件当時を振り返ります。「困難なときに小泉氏は自筆の手紙を送り、私的に大統領の力になった。大統領も人の子、互いに大切だと思っただろう。だから、大統領が小泉氏の退任を寂しく思うのは間違いない」
ブッシュ氏も小泉氏との良好な関係を再三、強調してきました。「コイズミは親友だ」―〇四年の大統領選挙の遊説で再三、強調しました。今回の首脳会談後の記者会見でも「首相の話をいつも演説で使っている。記者団はもう聞き飽きたというだろう」と述べたほどです。
しかし、これでもかといわんばかりに両首脳が「友情」を強調すればするほど、世界からいかに孤立しているかを際立たせることになります。
イラク戦争開始の口実とされた大量破壊兵器の保有に関する情報がでたらめだったことは、国際的に明らかになっています。ブッシュ氏自身が「攻撃を決断した責任がある」と反省めいた言明をしても、「イラク攻撃の支持は合理的な判断だった」(安倍官房長官)というのが小泉政権の認識です。
米国による戦争を支持し、イラクに派兵した「有志連合」も次々と撤退を表明しています。小泉政権はサマワからの陸上自衛隊部隊の撤退を開始したものの、航空自衛隊による支援を拡大しました。米側は「活動の撤退というよりも活動の移転」(米国務省副報道官)と歓迎し、首脳会談でもブッシュ氏が感謝を表明しています。
■動揺の会見
米軍による「テロ容疑者」の非人道的な扱いには、欧州諸国が強く反発しています。そうしたなか、米最高裁は六月二十九日、米政府がグアンタナモ収容所に設置した軍事法廷を違法とする判決を下しました。
くしくも日米首脳会談の真っ最中の出来事となりました。米国民がその日のテレビニュースで目にしたのは、記者会見で「友情」を確認しあうにこやかな両首脳の姿ではなく、判決についての米側記者の追及に動揺を隠せないブッシュ氏の姿でした。
ブッシュ氏にとって、対テロ戦争で国際的な支持を得ていることをアピールする場が、いよいよ窮地に追い込まれていることを示すものになったのは、皮肉なことといわざるを得ません。(ワシントン=山崎伸治)(つづく)