2006年7月1日(土)「しんぶん赤旗」
日米同盟どこへ (上)
発言の軽さ、合意の重さ
何があっても「米の味方」
小泉後も「緊密な関係」
小泉純一郎首相は二十九日、ブッシュ米大統領とともに、共同文書「新世紀の日米同盟」を発表し、「小泉後」に引き継ぐ路線を互いに約束し合いました。一体、何を継承しようとしているのか。首脳会談から浮かび上がるものは――。
ブッシュ大統領 首相は(歌手)エルビスのファンだ。(妻の)ローラと私は、お土産にジュークボックスをあげたが、最初にかける曲は何だったかな?
小泉首相 「アイ・ウォント・ユー、アイ・ニード・ユー、アイ・ラブ・ユー」(君がほしい、必要だ、愛している)
日米首脳会談後の共同記者会見(日本時間三十日未明)でのやりとりです。“おふざけ”ともとれる両首脳の軽さとは裏腹に、共同文書に盛り込まれた内容は、日本国民にとって重いものでした。
■地球規模に
共同文書の最大の“成果”としたのが、「世界の中の日米同盟」路線です。
小泉首相は共同記者会見で「この(日米)関係はブッシュ大統領と私の個人的関係にとどまらない。これから日本とアメリカ両国の関係にとって、この緊密な関係は必要だ」と解説しました。「世界の中の日米同盟」路線を、「小泉後」にも引き継がせるという狙いを率直に語りました。
「世界の中の日米同盟」路線とは何か。
共同文書の英文では「世界の中の日米同盟」は「グローバル・アライアンス」(地球規模での日米同盟)となっています。日米軍事同盟を、地球のすみずみにまで拡大しようというのです。
一九九六年に日米両首脳が発表した「日米安保共同宣言」は、日米同盟を「アジア太平洋地域」に拡大しましたが、それをさらに広げるものです。
■「迅速実施」
「小泉首相、あなたは首相の職を見事にこなした。勇気をもって導き、困難な決断をした」
共同記者会見で、ブッシュ大統領は小泉首相を、こうたたえました。賛辞を贈ったのは、イラク・インド洋への自衛隊の派兵と、在日米軍再編…。いずれも、米国の要求に応え、強い反対世論があるにもかかわらず、強行した施策ばかりです。
日米首脳会談と共同文書は、これらの“実績”の「確認」にとどまらず、「世界の中の日米同盟」路線を、「二十一世紀の地球的規模での協力のための新しい日米同盟」として「宣言」しました。
小泉首相は共同会見でとりわけ在日米軍再編について「政府としても実現していく責任がある」と述べました。
在日米軍再編は、地球規模での米軍と自衛隊の軍事協力を「同盟の重要な要素」と位置付け、そのための両軍の一体化、在日米軍基地の恒久化・強化を打ち出したものです。
共同文書は、在日米軍再編を「過去数十年間で最も重要な再編」と強調。「日米同盟を将来に向けて変革する画期的な諸合意」と位置付けました。そこには日本政府が基地を抱える自治体や住民向けに言い訳していた「負担軽減」は全く姿を消し、「米軍のプレゼンスをより持続的かつ効果的にする」という目的がむきだしに語られています。
共同文書は「これらの合意の完全かつ迅速な実施」を明記しました。
■追従する道
在日米軍再編に対しては、沖縄をはじめ全国で保守を含めた自治体ぐるみでの反対の声があがっています。
こうした声に今後も耳を傾けず、あくまで実施を最優先することを米国に約束したのです。
ブッシュ大統領は共同会見で、米軍支援のためのイラク・インド洋への自衛隊派兵についても言及し「自衛隊はイラクで素晴らしい仕事をしたので撤退が可能になった」と評価。航空自衛隊のイラクでの活動継続・拡大や、インド洋での海上自衛隊艦隊の活動を念頭に「空輸力や海軍支援を提供し続ける」と“期待”を表明しました。
空自や海自の活動も、米国が撤退を「許可」するまで続くことになるのか―。そんな危ぐまで抱かせます。
小泉首相は共同会見で「日米関係と同等の重要性を持つ国は世界で一つもない」と述べました。
世界でも孤立を深めるブッシュ政権に、いつでもどこでも追従する道でいいのか―。立場を超えた多くの国民が抱いている批判と不安が、小泉首相には全く理解できないことを示しています。(田中一郎)
(つづく)