2006年6月29日(木)「しんぶん赤旗」

非常勤国家公務員

雇い止め・賃下げ横行

半年ごとに契約更新も

国公労連 「公共サービスが後退」


 国家公務員の職場で非常勤やパート、派遣、委託など非正規労働者が増えています。総務省調べでは全職員の30%、約十三万四千人。公務の重要な担い手になっていますが、その労働実態は―。


 「契約を更新して何年も働いてきたのに昨年、『規定が変わり更新できなくなった。四月になればまた雇うから』といわれ泣く泣く退職した。雇用保険も使うなといわれたのでその間、収入もなくなってしまいました」

■人間扱いを

 国公労連が二十五日に開いた「非典型」労働者交流集会で、経済産業省で働く非常勤職員が切々と訴えました。

 四月から再雇用されたものの、勤務時間が八時間から五時間へと三時間も減らされ、収入が大幅にダウンしました。

 「労働日数の削減や何でも一方的に通知してきます。国が約束を守らないのでいいのか。もう少し人間扱いしてほしい」

 非常勤職員の任用期間は三年や五年が多数。しかし、更新を繰り返して十年以上働いている人も少なくありません。

 ところが、小泉内閣の「小さな政府」路線による総額人件費削減の流れのもとで、契約更新をしないで雇い止め(解雇)にしたり、いったん退職させて賃金などを引き下げてから再雇用するケースが増えています。

 安く使えるからと非常勤を派遣労働者に切り替える動きも増えており、雇い止めに拍車をかける要因になっています。

 なかには、有給休暇の付与や、年金など社会保険料負担を免れるため、半年ごとに契約更新を繰り返す悪質なケースも。

 ある非常勤職員は、二年間勤めているのに有給休暇がありません。

 半年で取得する権利が生まれますが、半年間勤めると退職し、一週間程度で再就職する繰り返しを続けているからです。

 時間給の引き下げや、勤務日数・時間の短縮なども横行しています。

 国公労連が実施した約六千八百人の実態調査によると、一番低い時給は、これ以下の賃金で働かせてはならないとした地域別最低賃金の六百八円を四円上回るだけの六百十二円。昨年比で十三円マイナスでした。

■「根拠ない」

 非常勤職員の増加と雇用条件の悪化は、職員の生活を脅かすだけでなく公務の専門性を低下させ公共サービスを危うくしかねない問題です。

 国公労連は、「非常勤職員の生活と権利を守ることは、公共サービスを守り、行政と職場の民主化にもつながる」(堀口士郎委員長)として雇用の安定と均等待遇を求めてたたかっています。

 北海道労働局は、今年度から、ハローワークの相談員などにたいする五年を上限とする雇い止め方式を廃止しました。

 「年数で切る根拠はない。経験のある非常勤職員がいなくなれば相談窓口サービスが後退する」と全労働北海道支部が追及してきた成果です。

 相談員として三年間働く女性は「五年で雇い止めといわれていたのでうれしい。賃金も上がり、一部自己負担だった健康診断も正規職員と同じく無料になり、いいことばかりです」とあきらめずたたかってきてよかったと振り返ります。

 国立病院機構(旧国立病院)の非常勤職員は、任期は一年を超えないとされ、繰り返し雇用は三回までとなっています。来年三月末で任用上限の三年を迎える非常勤職員は六千人にのぼります。

 全医労では、「技術の継承なしに病院の運営は成り立たない。非常勤職員の雇用の継続は、医療・療育の質の確保からも重要」として継続雇用を求める署名運動にとりくんでいます。

■画期的判決

 非常勤職員の雇い止めをめぐる裁判で、新しい動きが見られます。

 これまで再任用(任用更新)は、各省庁・出先機関の自由裁量とされ、裁判に訴えてもほとんど退けられてきました。

 東京地裁は三月、国立情報学研究所(現・大学共同利用機関法人情報システム研究機構)で十四年間働いてきた非常勤職員の再任拒否は違法だとして、非常勤職員の地位確認を初めて認める画期的な判決を出しました。

 この職員は、一年契約を十三回も更新してきたのに、一方的に雇い止めを通告されました。

 判決は「道具を取り替えるのとはわけが違う」「(雇い止めは)著しく正義に反し、社会通念上是認し得ない」と指摘。合理的な理由もなく更新しない場合などは、民法で確立している「解雇権の乱用禁止」が公法にも適用されるという初めての判断を示しました。

 「あきらめずたたかうことで社会問題となり、雇い止めを規制する立法化にもつながる」と弁護団の伊藤幹郎弁護士。

 基調報告した岡部勘市書記次長も「たたかえば要求は前進する。このことを確信にしたい」と強調しました。


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