2006年6月27日(火)「しんぶん赤旗」

米軍再編

基地の街から

競走馬襲う爆音

鹿児島・海自鹿屋基地


 「世界の中の日米同盟」をかかげて、米国の先制攻撃戦争の最前線拠点として在日米軍基地を飛躍的に強化する米軍再編。部隊や訓練の移転先にあげられた自衛隊基地に「同盟関係の新たな段階」をみました。(山本眞直)


地図

 鹿児島県にある海上自衛隊鹿屋航空基地。

 日米両政府は、沖縄の海兵隊普天間基地の空中給油機(KC130)を岩国基地(山口県)に移駐させることで合意。鹿屋基地に空中給油機部隊を「訓練及び運用のため、定期的にローテーション展開」させ、「必要な施設の整備」を打ち出しています。

 鹿屋基地は海上自衛隊の哨戒機(P3C)と救難ヘリが常駐しています。鹿屋市は海兵隊の空中給油機部隊の訓練移転に「騒音や事故などの危険性が高まり、基幹産業である畜産や住民生活への負担が増大する」と強く反対しています。

今もひどい被害

 鹿屋市内で競走馬を育てている牧場主(67)も空中給油機部隊の訓練に反対しています。「今でも騒音被害がひどい。さらに自衛隊と米軍の共同訓練が強化されるのはたまらない」

 すでに深刻な被害にあっています。

 「五月十四日午前七時十一分だった。哨戒機が二機編隊で飛来、牧場の上空で急旋回した。朝の餌を食べていた子馬が突然の爆音に驚き、後ずさりしようとして頭を柵にとられて転倒。両足を打ち、けがしたのさ」

 子馬は、自民党の大物政治家(故人)を通じてやっと確保した名馬の血統。来年デビュー予定のサラブレッドの一歳馬(オス)です。哨戒機の飛行は五月二十八日の自衛隊航空ショーの事前訓練でした。

 三年前の航空ショーでも飛来した米軍戦闘機の爆音で、やはりサラブレッドがパニック状態になり、ひざを柵に強く打ちつけ負傷しています。

先行して予算化

 自衛隊後援会役員の会社社長が小声で言いました。「空中給油機のための大型燃料タンクを建設中だよ」

 基地の西側では確かに大型燃料タンクの建設工事が進んでいます。

 鹿屋基地司令部の広報担当官(二尉)は「新タンクは米軍再編とは無関係」と否定します。日米の再編協議は昨年からで、タンクは〇四年に予算化、着工しているからだと言います。

 しかし、防衛庁が国会に提出した資料は、米軍と自衛隊による「軍事一体化」が再編協議に先行するかたちですすんでいることを示しています。

 「日米物品役務相互提供協定(ACSA)」にもとづく自衛隊から米軍への燃料補給は、鹿屋基地では〇四年度に九件だったのが、〇五年度は百一件と十一倍に急増しています。休日を除けば三日に一回の割合です。

 補給相手は「足の短い(普天間基地の)米海兵隊ヘリです」(広報官)。沖縄国際大学構内に墜落した米海兵隊大型ヘリ。墜落事故から間もない〇四年十月二十八日には、事故機と同型のヘリ三機が岩国基地に向かう途中、鹿屋基地で燃料補給を受けています。

米軍支援基地に

 自衛隊は「既存の燃料タンクが老朽化、一九八五年から予算要求してきた」と説明。しかし二十年も放置されてきた新設要求が〇四年に実現したことは偶然なのか。広報官は記者の質問に答えました。「老朽タンクの廃止は聞いていない」。同基地での燃料補給能力の大幅強化です。

 山下栄・鹿屋市長は、市議会全員協議会(五月十一日)で語りました。

 「九州の自衛隊基地が新たな『米軍支援基地』として位置付けられ、鹿屋基地はその中継拠点となることから、(略)地域の将来にわたる安心・安全が脅かされることを強く懸念している」

 牧場主は言います。

 「小泉首相はアメリカ言いなりに、“有事”とかを口にしているが、実際は相手よりも先に手を出す米軍にくっついていく共同訓練ではないか。米軍のために鹿屋が迷惑をうけるのはごめんだ」


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