2006年6月27日(火)「しんぶん赤旗」
主張
原子力空母配備
事故がおきてからでは遅い
米軍横須賀基地(神奈川県)への原子力空母配備の動きが強まっています。蒲谷横須賀市長は「通常型空母の可能性がゼロになった今、原子力空母の配備はやむを得ない」といっています。
しかし、母港化を認めアメリカの先制攻撃機能を支えること自体、世界では日本だけであり、これ自体異常です。しかも、放射能をまき散らす核事故がひとたび起これば、横須賀市民はもちろん、首都圏三千万人に甚大な被害を与えます。米軍のために国民に危険を押しつけるなど許されていいはずがありません。
危険性は隠せない
原子力空母の配備を認めることは、原子力潜水艦の短時日出入りする「寄港」と違い、一年の半分は横須賀港に停泊することを意味します。それだけ核事故に直面する機会が増えるのですから重大です。
アメリカ政府は、「五十年以上にわたり一度たりとも…放射能の放出を経験することなく」(原子力軍艦の安全性にかんするファクトシート)といって、核事故がいっさいなかったかのようにいっています。これは、米原子力艦船が放射能放出一歩手前の事故を多発させている事実を覆い隠す“偽造説明”でしかありません。
原潜ウッドロー・ウィルソンの炉心溶融寸前の事故、巡洋艦ロングビーチの一次冷却水漏れ、空母エンタープライズの放射能をふくんだ冷却水漏れ、同空母の原子炉火災による放射能漏れ、空母ステニスの冷却水取水口目詰まりによる原子炉緊急停止、などあげればきりがありません。艦船搭載の原子炉は一般原子炉に比べて危険性が高いという指摘を裏付けています。
アメリカ政府の言い分は、こうした事故は核事故でないのだから日本は容認せよというのと同じです。これほど危険な言い分はありません。
重大なことは、アメリカ政府が原子力空母の二つの原子炉の構造も電気出力も、原子力燃料棒を格納する容器のしくみや耐圧強度に関する情報もいっさいあきらかにしないため、日本で安全の確認・検証作業さえできないことです。日本の手で検証もできないというのに、外務省が横須賀市に安全だといって配備受け入れをせまるのはきわめて無責任です。「安全」を最大の問題にしてきた横須賀市長がこれをうのみにするのも筋が通らない話です。
配備が予定されるニミッツ級原子力空母は、電気出力が四十万キロワット、熱出力に換算すれば百二十万キロワットと推測されています。放射能放出の核事故をおこせば、六十キロ圏内では放射能による急性障害が発生する、風向きでは被害はさらに拡大するとの民間専門家の指摘もあります。
核事故がおこってからでは遅いのです。国民の命を危険にさらす原子力空母の配備は拒絶すべきです。
米本国でやればいい
もともと空母の母港化(一九七三年)は三年の約束でした。母港返上を要求するのは国民の権利です。原子力空母は、「日本防衛」と関係のない先制攻撃戦争のための“殴り込み部隊”の中核とされています。戦争放棄の憲法をもつ日本が配備を拒否することは、日本と世界の平和のために大きな役割を果たします。
アメリカはいま、軍事再編のなかでハワイ、グアムの基地を強化しています。日本が原子力空母を配備する必要はありません。
7・9首都圏大集会を成功させ、原子力空母は米本国にもっていけの声を強めましょう。