2006年6月26日(月)「しんぶん赤旗」

列島だより

バス、タクシー乗りにくい人の外出を支援

広がる移送サービス


 バスやタクシー、鉄道が利用しにくい人たちの“足”を確保するために、NPO(特定非営利活動法人)などボランティア組織による福祉有償運送事業(移送支援サービス)が各地にひろがっています。岡山県の井原市(いばらし)美星(びせい)地区と千葉県の大網白里(おおあみしらさと)町の福祉有償運送事業を紹介します。


岡山・井原市美星

通院、買い物で活用

地図

 四月一日から、NPO法人まちづくり岡山ネットワーク(吉澤万千子代表)が福祉有償運送事業をスタートさせました。事業開始初日の四月一日には、午前九時から、岡山県井原市役所美星支所前で「キラキラ号」と名づけられた車両(車いす用リフト付きワゴン車)の出発式が行われました。

 昨年三月に井原市、後月(しつき)郡芳井町、小田郡美星町が合併しましたが、公共バス路線廃止・縮小でしだいに交通手段が後退し、“足”の確保が求められています。この事業は、これにこたえるため、美星地区を中心にして、始められたものです。

会員に登録

 この事業は登録した会員(年会費二千円)から連絡を受け、自宅から目的地まで輸送するドア・トゥ・ドア方式の運行を基本にしています。利用料は一キロまで二百円、二キロまで三百円、三キロまで四百円、四キロまで五百円、五キロまで七百円、六キロまで八百円、七キロまで九百二十円、八キロまで千四十円、九キロまで千百六十円、以後一キロごとに百二十円加算となっています。

利用しやすい

 現在、登録会員は七十三人。一日平均利用者数は七人で、市・内外の病院や、理美容院、買い物にも利用されています。六月からは、相乗りの許可も取得しました。身近に利用できるタクシー会社もありません。

 「キラキラ号」は利用者から、「利用したいとき、いつでもすぐ来てくれる」「運転手さんが地元の人なので気軽に何でも頼める」と大変歓迎されています。

 事業を進めているNPO法人関係者は「運転手は、運転業務だけということになっているが、玄関先までお送りして『はいありがとうございました』ということで、すぐ帰り難いということがあり、どこまでお世話をしてよいのか悩んでいるようです。こんなときはできるだけホームヘルパーさんに利用時間帯に、利用者のお宅へ来ていただくようにお願いしている」と話していました。

 また、美星地区の公立の医療機関が一時診療内容を縮小していましたが、六月一日から診療所として再出発をしたので、利用者も増えるのではと期待しています。車両をもう一台増やして二台にするための準備をしています。

 多くの人たちに大変喜ばれ、期待されているので、ぜひ充実させるために、公的な支援の重要ささを痛感しました。

 (日本共産党井原市議・森本ふみお)


千葉・大網白里町

高齢者・交通弱者の足に

地図

 千葉県の大網白里町社会福祉協議会は「歩行困難な方でタクシー等の交通機関を利用できない方に対し、福祉車両での外出支援」(『おおあみしらさと社協だより』第九十六号)をしています。この活動について、吉田昌一会長は「手をさしのべることが必要な方に、手をさしのべる一つとして外出支援にとりくんでいます」とのべます。

車いすのまま

 事務局の人たちの話によると、昨年二月に千葉県で初めて、関東運輸局千葉運輸支局長から福祉有償運送許可をえるまでの活動は苦労しました。タクシー会社の営業を侵害しない、歩行困難な住民にとって移送車が必要である―ことを粘り強く訴えました。会員制で利用者は限定されることや、町内のタクシーでは車いすに乗ったまま乗降できないなどの実態も示して、理解を得るようにしました。

 利用者は、年会費三千円、利用三十分につき五百円を納入します。利用時は利用者名、運転者名を記入したチケットで納入します。担当の市東(しとう)達也係長は「走行時間は三分ぐらいでも、車いすやストレッチャー(担送車)の人はリフトで乗降するので時間がかかります。利用は町内が原則ですが、町内に総合病院がないので、千葉市など町外への通院も可能にしています」と話しています。

 会員は現在三十二人。移動制約者という条件があるため、利用要望者すべての入会はできません。「それが、つらい」と吉田会長は語ります。

地域の協力で

 狭い道でも入れる軽自動車一台を含め、三台での運営は、事務局職員全員が安全運転の講習を受け、利用者の要望にこたえています。また、企業の地域貢献制度で企業からの職員派遣(企業の人件費負担)と住民の運転協力を得ています。車両は寄贈を受けています。市東係長は「これで、なんとか運営が維持できています」と話しています。

 大網白里町では、十年前に発足した「巡回福祉バスを走らせる会」の運動と町の努力で、民間病院の送迎バスを利用した高齢者外出支援事業が一歩踏み出しました。

 住民とともに高齢者や交通弱者の外出支援に取り組んでいる日本共産党の上家初枝町議は、こうのべます。「社会福祉協議会の取り組みは外出支援の必要な人の願いにこたえたものですが、利用者にも限りがあります。公的援助は必要不可欠です。もっと多くの方々が利用できる外出支援事業として発展してほしいと思っています」

 (栗山正隆)


福祉有償輸送とは?

 NPOなどボランティアの福祉有償運送 国土交通省が二〇〇四年三月十六日付「福祉有償運送及び過疎地有償運送に係る道路運送法八〇条第一項による許可の取扱い」通達で、NPOなどボランティアの福祉有償運送を法の保護下でできるようにしました。地方公共団体(主宰者)、住民、バス・タクシー事業者、NPOの代表、学識経験者などで構成する運営協議会で協議し、道路運送法第八〇条第一項に基づき、福祉有償運送の許可を可能にしました。

 道路運送法第八〇条第一項 自家用自動車は、有償で運送の用に供してはならない。ただし、災害のため緊急を要するとき、又は公共の福祉を確保するためやむを得ない場合であって国土交通大臣の許可をうけたときは、この限りでない。(いわゆる白タク行為などを排除し、利用者を保護するためのものです)

 安全・利便のための条件 運転者は、原則として二種免許が必要ですが、安全運転、乗降介助などの講習修了者は一種免許でも可能。運行管理体制や損害賠償措置などの確立、車体に団体名、福祉有償運送を示す表示が必要です。許可期間は二年間。利用料はタクシー運賃の二分の一以下を目安にして運営協議会で判断します。


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