2006年6月21日(水)「しんぶん赤旗」

党首会談での志位委員長の発言(要旨)


 自衛隊のイラク派兵問題に関する二十日の党首会談での日本共産党の志位和夫委員長と小泉純一郎首相とのやりとり(要旨)は次のとおりです。


航空自衛隊の活動を拡大するつもりか――4点を問う

 小泉首相 イラクのムサンナ県での治安の権限移譲もあり、陸上自衛隊の撤収の時期に来たということで、撤収しようと考えている。今後、航空自衛隊、ODA(政府開発援助)などで協力していきたい。

 志位委員長 陸上自衛隊の撤退については、わが党は、もともと派兵に反対し、派兵されたのちもすみやかな撤退をもとめてきた。撤退は当然だ。

 問題は、いま首相も航空自衛隊に言及されたが、空自の活動の継続・拡大が伝えられていることにある。これまで空自の活動というのは、タリル、バスラなど、イラク南部の空港に限られていた。これが大きく拡大されるのではないかということを、私たちは強く懸念している。そこで首相につぎの四点について、お答え願いたい。

 第一は、六月四日に、シンガポールでラムズフェルド米国防長官と額賀防衛庁長官との会談がおこなわれ、その席で、米側から空自の輸送活動をバグダッド空港に拡大することが要請された。それに対し額賀長官は、「ニーズに応じて考えていきたい」と答えたというやりとりが報じられた。バグダッドへの空自の活動の拡大を考えているのか。これが第一点だ。

 第二は、米海兵隊ニュースによると、最近、バグダッド西方のアサド空軍基地を空自の隊員が調査し、そのなかで調査にあたった空自の隊員が、「命令がくだれば、ここに飛ぶ準備がととのっている」「活動範囲が拡大していくだろう」と答えている。アサド基地への空自の活動の拡大を考えているのか。

 第三は、これまでは空自の輸送活動は、C130輸送機三機であたっていた。空自の活動の拡大にともなって、今後、人と機材を増やす可能性はあるのか。

 第四は、いったいどういう条件がととのえば、空自を撤退させるのか。

空自の活動拡大を「検討する」と明言したことは重大

 首相 第一、第二、第三については、今後、考えていきたい。安全確保の問題なども検討しつつ考えていきたい。

 志位 考えていきたいといわれたが、それは検討していくということか。

 首相 今後、検討していく。

 志位 バグダッドやアサドというイラクの軍事紛争の中枢部にも、空自の活動を拡大していくことを「検討していく」と明言した。きわめて重大だ。

 第四の問題――どういう条件がととのえば、空自を撤退させるのかということについては、首相はどういう見解か。

 首相 イラク特措法にもとづいて判断する。特措法の条件を満たさなくなれば、撤退の検討をする。それ以上のことはいえない。

 志位 イラク特措法にもとづいて判断するのは当たり前だ。「それ以上のことはいえない」ということは、アメリカが軍隊をひくまでは、空自は永久にアメリカの支援をしつづけることになるではないか。日本としての主体的判断がまったくないではないか。

 首相 主体的に判断する。

 志位 どういう条件がととのえば撤退するのかと聞いたのにたいして、「いえない」ということは、主体的な判断がないということだ。これでは、アメリカが撤退するまでは、空自は米軍支援の活動をつづけることになる。

空自の派兵対象の空港が、13から24に拡大されている

 志位 さらに、首相に、空自派兵の基本的な枠組みについて認識をただしておきたい。昨年十二月に政府が自衛隊派兵の基本計画を変更したさいに、空自の活動の対象となる空港が、それまで十三の空港であったのが、イラクすべての空港である二十四の空港に拡大していたことが、明らかになっている。国会でも、わが党の議員が追及して、政府も認めているが、この事実は間違いないか。

 首相 そういう細かいことは、わからない。

 志位 細かいことではない。政府が決めた基本計画の内容の問題だ。率直にいって、そういう重大な問題を、自衛隊の最高の責任者である首相が知らないまま、空自の活動の拡大をはかるというのは、きわめてゆゆしき問題だ。

 首相 対象とする空港がどうなっているかについては、後で調べてお伝えする。

自衛隊が米軍の掃討作戦を直接支援することになる

 志位 イラクでの航空自衛隊の活動を拡大する方向を、首相が明言されたことは、きわめて重大だ。

 空自の活動の継続・拡大によって、自衛隊の活動が文字どおり米軍支援の活動に特化されることになる。これまでは、陸上自衛隊は名目上は「人道復興支援」にあたるということになっており、航空自衛隊はその陸上自衛隊に物資を運びながら、「安全確保支援活動」という名目での米軍支援にあたってきた。それが陸上自衛隊が撤退すれば、文字どおり空自の活動は、米軍支援に特化されることになる。

 しかも、活動の範囲が拡大する。バグダッド、アサドというのは、いま米軍が掃討作戦をおこなっている、激戦地だ。

 この間、米軍は、イラク全土で、二百十回におよぶ掃討作戦を繰り返し、多くの罪のない民間人を殺傷してきたが、いま掃討作戦の焦点となっているのは、バグダッドであり、ファルージャであり、ラマディだ。空自の活動の拡大が検討されているバグダッド空港、アサド空港は、まさに掃討作戦のど真ん中に位置する空港だ。空自の輸送活動がそういう場所に拡大されるなら、米軍の掃討作戦の直接支援の活動を自衛隊がになうことになる。これはまさしく戦闘活動と一体になった支援であり、イラク特措法でも説明がつかない。イラク情勢の悪化に直接加担するという点でも、有害きわまりない。

 私たちは、空自の活動を継続・拡大することに強く反対する。陸自とともに空自をただちに撤退させることを、強くもとめる。

空自の活動の拡大を米国への手土産にすることは許されない

 志位氏は、党首会談後の記者会見で、次のように述べました。

 志位 今回の政府の決定について、陸自の撤退に焦点があたっており、これ自体は遅きに失したこととはいえ当然のことだ。

 しかし、一番の問題は、空自の活動の継続・強化にある。しかも、活動する場所を、バグダッドやアサドという、米軍が掃討作戦をやっている激戦地のど真ん中の空港に広げることについて、首相は「検討する」と明言した。

 この問題を手土産にして、日米首脳会談にのぞみ、アメリカへの忠誠の証しとするということだ。ここに今回の問題の中心点がある。

 空自をふくめてすべての部隊のすみやかな撤退を、強くもとめていきたい。


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