2006年6月19日(月)「しんぶん赤旗」

NHK日曜討論

市田書記局長の発言(大要)


 日本共産党の市田忠義書記局長は十八日、NHK「日曜討論」に出演し、日銀総裁の「村上ファンド」への出資問題、国会閉幕と今後の対応などについて、自民党・武部勤、民主党・鳩山由紀夫、公明党・冬柴鉄三、社民党・又市征治の各党幹事長と討論しました。


日銀総裁出資問題―

責任をとって辞めるべきだ

 日本銀行の福井俊彦総裁が、インサイダー取引で逮捕された村上世彰容疑者が代表だった「村上ファンド」に一千万円投資し、年間数百万円の利益を得ていた問題について、与党側は「反省すべきは反省し、職責を全うしてもらいたい」(武部氏)、「(「村上ファンド」への投資が)不適切だという根拠はない」(冬柴氏)と、福井氏を擁護しました。市田氏は、福井総裁だけではなく、小泉純一郎首相の責任を厳しく指摘しました。

 市田 日銀総裁といえば、金融行政の中立・公正を保証する最高責任者です。それが「村上ファンド」の広告塔の役割まで果たしていた。多いときには(年間)数百万円、だいたい三年で二倍、六年で五倍だから、数千万円の利益です。非正社員の年収の十倍、二十倍という利益をインサイダーでもうけたということなんですね。しかも量的緩和、低金利などを「小泉改革」に沿ってやってきた張本人で、それで奪われた国民の預金利子は三百兆円にもなっています。当然、責任をとって辞めるべきだし、小泉首相の任命責任も問われます。国会閉会中も、きちんと審議を行うべきです。

 それと、この問題で一言いいたいのは、「村上ファンド」の事件もライブドアの事件も背景は共通しています。金融市場の野放図な規制緩和と証券取引の優遇税制ですよ。マネーゲームのプレーヤーにとってこれほどやりやすい金融市場はなかった。小泉「構造改革」の規制緩和が生み出した必然的な結果です。ここにメスを入れないと、第二、第三の村上さんが出てくるという問題だと思いますね。

通常国会の総括―

悪法成立防いだのは世論と論戦の成果

 討論は、十六日に閉会した通常国会をどう総括するかに移り、教育基本法改悪法案や改憲手続き法案などの悪法について、武部氏が「一歩でも二歩でも前進させるということで法案を先出しした」などと発言。鳩山氏は、「われわれの考え(対案)に従ってやってもらったら、すぐにでも通せるような話だ」とのべました。これにたいし、市田氏は次のようにのべました。

 市田 (小泉内閣が)国会会期を延長しないということを決めた思惑がどこにあったかは定かではありませんけれども、(政府・与党は)悪法をなんとしても通したいときには会期延長をいつもやっている。国会論戦と国民世論のもとで、教育基本法の改悪や改憲手続き法案はどうも延長しても通りそうにないということで閉じられたという面があったと思う。

 教育基本法ということでいえば、「教育の憲法」といわれている。国民投票法案は、改憲のための手続き法案であって、これを会期末ぎりぎりに出してくる。あるいは防衛庁を「省」に昇格する法案なんて、本当に会期を閉じる直前(の提出)でしょう。こういう大問題を議論の時間がほとんどないようなぎりぎりに出してきた。さきほど「先出し」といわれたけれど、その国会に提出してだめだったものは廃案にする(のが筋だ)。国民の信任を得なかったということなんです。

 私は、教育基本法改悪法案や改憲手続き法案が廃案にならなかったのは残念だけれど、継続になったのは国会論戦と国民の世論、運動の一定の成果だと(思います)。閉会中も大いに国民運動を盛り上げて、次の国会で廃案に追い込むためにがんばりたい。医療改悪法案が通ったのは残念ですが、実施を許さないたたかいを強めたいと思います。

野党のあり方―

政権交代さえあれば、では国民の立場を代弁できない

 討論のなかで、武部氏が民主党の「偽メール」問題と共謀罪での対応に言及し、民主党を「党利党略だ」と批判。市田氏は、これを受けて次のようにのべました。

 市田 今度の国会、日本共産党としては「たしかな野党」として、どんな問題でも政策的にも、政治的にも本質をついた議論をやったと自負しています。教育基本法問題でも、愛や道徳は法律で強制すべきでない、あるいは教育は不当な支配に屈するべきではない、という問題も明らかにしました。格差問題でも、その根源に新自由主義的な規制緩和路線があると問題にしました。

 同時に、今度の国会は、野党のあり方も問われたと思うんです。率直にいわせてもらって、偽メール問題でいいますと、やはり自民、公明との政治の対抗軸が明確でない民主党さんが偽メール問題に飛びついたことによって、当時、四点セット(BSE、ライブドア事件、耐震強度偽装、防衛施設庁談合)で窮地だった自公・小泉政権が救われたと思うんです。

 あるいは教育基本法問題でも改憲手続き法案でも自民党とうり二つの法案を対案と称して出されたわけです。悪政の競い合いのなかで、国民の利益よりも政権交代さえあればいいというあり方では、やはり国民の立場を代弁できない。逆に自公政権を助けることになる。

小泉「改革」の評価―

国民には景気回復の実感も実態もない

 テーマは、小泉「改革」の評価に移り、武部氏は「数字はうそをつかない。景気は上向きにきているという実態はある」と発言。冬柴氏も「景気拡大が続いており、あと五カ月で戦後最長の『いざなぎ景気』を上回る」などとのべました。これにたいし、市田氏はつぎのようにのべました。

 市田 数字はうそをつかないと武部さんも冬柴さんもおっしゃいました。そのとおりだと思うんです。小泉内閣の五年間で庶民への負担増と増税は十三兆円です。法人税の収入は、いま十兆円です。前の法人税のままだったら二十二兆円です。十二兆円まけてもらっているわけです。「いざなぎ景気」ということをいわれましたけれど、どうして同じ時期にサラリーマンの年収が九七年をピークにして九十万円も減るのか、生活保護世帯がどうして百万世帯にも増えるのか。あるいは働いている人三人に一人、若者や女性では二人に一人が年収二百万円以下の非正社員です。これが増えていっているわけでしょう。さきほど鳩山さんが、自殺者が三万人を超えていると(いわれたが)、これは八年連続ですよ。しかも、去年の統計をみてみますと、経済苦で自殺せざるを得なかったという人が七千七百人なんですよね。就学援助(を受けている人)も増えている。これでどうして国民にとって景気回復したといえるのか。

 一握りの一部上場企業は一兆円以上のもうけをあげていますよ。光といえば、そういう一握りの大企業がもうかっているだけの話で、国民にとって景気回復したという実感も実態もないというふうに思います。

 市田氏の発言にたいし、武部氏は「税収をあげるためには経済を活性化しなくてはいけない。企業収益があがるような構造改革が必要じゃないですか」などとのべつつも、「なにも問題がないといっているわけではない。小泉改革はいま途上だ」などと言い訳しました。冬柴氏も「小泉改革が国民の隅々まで景気をよくしたとはいっていない」といわざるを得ませんでした。市田氏は、次のようにのべました。

 市田 さきほど企業が収益を上げてどこが悪いかと武部さんはおっしゃった。私たちも、企業はもうけるためにあるんだから、それは構わないと思うんです。問題はボロもうけのボロを社会的に還元しなさいと(いうことです)。

 規制緩和といって、当たり前の働き方を破壊するとか、社会保障を破壊する。どんどん規制をとりのぞいて、いわば勝手放題のことを企業がやれるようにしておいて、もうけにもうけて使い道に困っているお金が八十数兆円もごろごろしているのに、そこには税金をかけない。そして(庶民への)定率減税だけは廃止する。同じときにやった法人税の減税はそのままにしておく。景気回復したというのなら、もうけにもうけている企業にどうして税金をきちんとかけないのか。

 きちんとしたルールを守って、そのルールのうえに競争をやるのは構いませんよ。しかし、働いている労働者や中小業者や、そういう人々をないがしろにして、一握りの企業がもうけるというだけの社会では長続きしないし、だめだということをいいたいのです。


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