2006年6月15日(木)「しんぶん赤旗」

原子力空母を容認

神奈川

横須賀市長、公約覆す


 神奈川県横須賀市の蒲谷亮一市長は十四日、同市の米海軍横須賀基地に配備されている通常型空母キティホークの後継艦として、原子力空母ジョージ・ワシントンの配備を容認する考えを表明しました。市議会全員協議会で、「原子力空母の入港はやむを得ない」と述べました。

 米国は昨年十月、二〇〇八年に退役するキティホークに代わって原子力空母を配備すると発表しましたが、蒲谷市長は「容認できない」との立場を表明してきました。これに対して日米両政府は「通常型空母の配備の可能性はゼロ」「原子力空母は安全」と繰り返し、容認を迫ってきました。

 地元紙の世論調査では、原子力事故などへの懸念から六割以上の市民が配備に反対しています。米国の配備発表から七カ月余りで容認に転じたもので、市長の政治姿勢が問われることになります。日本共産党の井坂新哉市議は全員協議会で、「原子力空母の配備を容認したことは誠に遺憾。公約を覆したことに強く抗議する」と批判しました。

 日米両政府は十五日の日米合同委員会で、横須賀への原子力空母入港を可能にするしゅんせつ工事の事前調査で合意するなど、配備に向けた動きを強める構えです。

 「原子力空母の横須賀母港問題を考える市民の会」の呉東正彦代表は同日、「配備まであと二年ある。原子力空母の母港化ストップのためにあらゆる手段を尽くす」との声明を出しました。

撤回求める/党県委と市議団

 神奈川県横須賀市の蒲谷亮一市長が十四日、米海軍・横須賀基地への米原子力空母の配備計画を受け入れると表明した問題で、日本共産党神奈川県委員会(小池潔委員長)と党市議団(ねぎしかずこ団長)は同日、連名で市長に抗議し、受け入れの撤回を強く求める見解を発表しました。

 見解は、(1)市長は外務省の回答について「多くの市民の不安を払しょくするもの」としているが、回答は原子力空母の「安全性」に確証を得るものではない(2)市長は「市民の声はほぼ出尽くした」としているが、二回にわたって行われた「意見を聞く会」で意見表明できた市民はわずかである(3)市長は市長選挙で原子力空母受け入れに反対する公約を掲げて当選しており、公約違反だ―などと指摘しています。

 そのうえで、党として「引き続き、多くの市民・県民とともに力を合わせ、原子力空母の横須賀配備阻止のため、奮闘する」と決意を表明しています。


これまでの動き

05・10・27 米国、横須賀への原子力空母配備を表明

06・4・17 米政府、原子力艦船に関する「ファクトシート」を公表

5・8 横須賀市が「ファクトシート」への質問書を提出

5・15 横須賀市 第1回「市民の意見を聞く会」

6・8 横須賀市 第2回「市民の意見を聞く会」

6・12 麻生外相、横須賀市の質問書への回答を提出

6・14 蒲谷市長、原子力空母容認を表明


世界と日本に脅威

 「日本と極東の安全のため、空母の存在は重要」。蒲谷市長はこう述べ、原子力空母配備は「やむを得ない」と述べました。

イラク戦争の主力

 しかし、横須賀の米空母機動部隊は、日米安保条約が定める「日本と極東の平和と安全」とは無縁の、地球規模の先制攻撃戦略の担い手です。実際、一九九一年の湾岸戦争、二〇〇一年の対テロ報復戦争、〇三年のイラク戦争といった大規模作戦への出撃を繰り返してきました。

 横須賀への原子力空母配備の狙いは、日本における空母の「長期にわたる前方展開能力を維持」(在日米軍再編「中間報告」)することです。

 横須賀への空母配備で、米本土と比べてアジア太平洋全域や中東への到達時間は大幅に短縮されています。先制攻撃戦略のために即応能力を重視する米軍にとって横須賀は死活的な位置を占めています。原子力空母の配備が進めば、海外で唯一の米空母の母港という異常な事態が永久化されることになります。

 横須賀への原子力空母配備は、世界と日本の人々に重大な脅威を与えます。イラク戦争では、キティホークの随伴艦がペルシャ湾から発射した巡航ミサイルが開戦の合図となり、艦載機部隊は一カ月近くにわたってイラク全土を空爆。多くのイラク市民を殺傷しました。日本国内では、米海軍厚木基地(神奈川県)に配備されている艦載機部隊の無法な訓練で、首都圏や中国山地で激しい爆音被害をもたらしています。

安全を確信できず

 そして、横須賀をはじめ首都圏全域が、原子力事故の危険にさらされることになります。米国は四月、米原子力艦船は「安全」だとする文書(「ファクトシート」)を公表しましたが、横須賀市は「安全性を確信できない」として質問を提出し、日本政府は十二日に回答を出しました。蒲谷市長はこれを高く評価しましたが、中身は「ファクトシート」の完全な焼き直しです。

 日米両政府は横須賀市に強い圧力をかけ、蒲谷市長に容認させました。しかし、市長の容認は市民の容認を意味するものではありません。(竹下 岳)

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