2006年6月13日(火)「しんぶん赤旗」

汚泥談合

11社・幹部11人起訴

大阪地検 改正独禁法違反で初


 自治体などが発注するし尿・汚泥処理施設をめぐる談合事件で、大阪地検特捜部は十二日、プラントメーカー十一社と各社の部長級幹部ら十一人を独禁法違反(不当な取引制限)の罪で起訴しました。東京高検に代わって各地検による起訴を可能にした改正独禁法の初の適用です。


 起訴されたのはクボタなど十一社と、五月に逮捕された七社の担当者七人のほか、在宅で事情聴取を受けてきた住友重機械工業など四社の四人。

 起訴状などによると、担当者らは二〇〇四年十二月、自治体から設計図作成などを委託されたコンサルタント会社への貢献度の高さで受注予定業者を決める「汗かきルール」に基づき受注調整することで合意。昨年二―七月の八件の入札で調整を繰り返しました。同期間の十一社の市場支配率はほぼ100%でした。

 特捜部の調べでは、受注金額は起訴対象八件で計約二百三十億円。このうち談合による不正利得は一割強の二十数億円に上り、コンサル会社へのリベートや地元対策費などに充てられました。

 国土交通省は同日、刑事告発された十一社を、同日から五―九カ月間の指名停止としました。処分の内訳は次の通り。

 【指名停止九カ月】住友重機械工業

 【同八カ月】三菱重工業、JFEエンジニアリング、日立造船、三井造船

 【同六カ月】荏原製作所、クボタ、アタカ工業、栗田工業

 【同五カ月】西原環境テクノロジー、タクマ


橋梁・水門・トンネル・下水道

別件でも“常習犯”

 し尿・汚泥処理施設建設をめぐる談合事件で起訴されたメーカー十一社には、これまでも別の談合で、独占禁止法違反容疑で公取委の告発や排除勧告を受けたり、同法違反の罪で起訴された「常習犯」ともいえる企業が多数あります。

 昨年五月に摘発された旧日本道路公団や国土交通省発注の鋼鉄製橋梁(きょうりょう)談合事件。この事件では、「K会」「A会」といった談合組織に加わった四十九社のうち二十六社が起訴されました。このなかには、今回のし尿・汚泥処理施設建設をめぐる談合事件で起訴された三菱重工業、住友重機械工業、JFEエンジニアリング、日立造船、三井造船の五社が含まれています。

 この五社は、国土交通省や水資源機構、地方自治体が発注する河川やダムの治水用水門工事でも談合を繰り返していたとして、ことし三月、公取委の立ち入り検査を受けています。なかでも三菱重工業、日立造船の二社は「睦水会」という受注調整組織の幹事役でした。し尿・汚泥談合の談合組織「NS会」幹事社の一つ、荏原製作所も水門工事談合で立ち入り検査を受けました。

 旧首都高速道路公団(現首都高速道路)や国などが発注したトンネル換気設備工事の入札をめぐっても、ことし三月三十日、公取委が独禁法違反容疑で六社の立ち入り検査を実施しました。うち、四社は水門工事をめぐる談合疑惑でも立ち入り検査を受けましたが、し尿・汚泥談合で起訴された荏原製作所、三菱重工業も含まれています。

 このほか、今回、し尿・汚泥談合で起訴され、逮捕者を出したクボタは一九九九年二月、水道管などに使われるダクタイル鋳鉄管販売をめぐるヤミカルテル事件で告発されたことがあります。また、ゴミ焼却施設をめぐって九四年から九八年にかけて計六十件の入札で談合したとして九九年八月、タクマ、JFEエンジニアリング(当時日本鋼管)、三菱重工業を含む五社が排除勧告を受けました。二〇〇四年の下水道ポンプ工事談合では荏原製作所などが排除勧告を受けています。

 談合の“常連”といったぐあいです。し尿・汚泥談合で、幹部社員が逮捕された際、各メーカーはコメントを発表していますが、「会社を挙げて再発防止、法令順守の徹底に取り組む」(荏原)、「今後とも捜査に誠実に協力し、コンプライアンス(法令順守)経営の徹底に努める」(日立造船)といった言葉が空々しく響きます。(藤沢忠明)

表

もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp