2006年6月12日(月)「しんぶん赤旗」

いま地方で

税金投入 トヨタのため?

愛知・蒲郡 赤字リゾートに70億円


 愛知県蒲郡市の複合リゾート施設「ラグーナ蒲郡」を運営する第三セクター「蒲郡海洋開発」(蒲開)は、今年三月期決算で百九十五億円の巨額な赤字を出しました。補てんに県・市は合わせて七十億円の税金投入を決定。リゾート事業に税金をつぎ込みつづける背景に、トヨタ自動車の影が見え隠れします。

(唐沢俊治)


地図

 蒲開は一九九一年、三河湾の埋め立て地百二十一ヘクタールにマンションなど土地分譲とレジャー施設運営の二つを目的とし、県、市、トヨタなどが出資し設立。現在、トヨタは民間筆頭株主として15・8%、また、県が26%、市が25%をそれぞれ出資しています。

 “海の軽井沢”をキャッチフレーズにしたバブル期の構想にもとづき、土地分譲の収入を柱にテーマパーク、ショッピングセンター、レストランなどレジャー施設を運営しています。

 しかし、バブル崩壊でリゾート開発は行き詰まり土地分譲が軌道に乗らず、六棟建設を目標にした分譲マンションは現在、三棟のみ。現・三菱東京UFJなど銀行団は二〇〇二年、不良債権処理に追われ、蒲開に対する融資の一部を債権放棄し事業から撤退。トヨタが融資を引き受けました。この時、県と市の出資金のうち約二十四億円は、累積債務の補てんに消えました。

 二〇〇六年三月末決算で巨額の赤字となったのは、テーマパーク施設は市場性がなく帳簿価格より大幅に下落したため、減損会計により百六十三億円を損失として計上したからです。

銀行団が撤退

 県と市、トヨタ、蒲開は五月二十六日、赤字穴埋めのため合計百三十八億四千万円を増資することで合意。県がラグーナ周辺の県有地六・六ヘクタール(評価額三十二億一千万円)の現物出資に加え現金十億四千万円、市が市有地四・五ヘクタール(同十八億一千万円)と現金十億円をそれぞれ負担します。

 蒲郡市民は「市が二十八億円入れて、どれくらい市民に戻ってくるのか分からない。良いのか悪いのか判断する材料もない」(男性五十歳)と静観する声の一方、ラグーナ近くで十年来、飲食店を営む男性(66)は「ラグーナでお客が増えたわけじゃないし、経済効果なんてない。出さないほうが良いに決まってる」。また、「もともと、トヨタさんが始めたようなものでしょ。トヨタが出すべきよ」(女性四十五歳)という声も聞かれます。

 「公有水面埋立法」により資本金の51%を「官」が負担することが規定されているため、県と市は税金投入は避けられないと言います。しかし、増資には別の側面があると、関係者から聞こえてきます。

 「県と市は、ラグーナ存続を第一にしています。存続のためには、トヨタの融資の継続が必要。増資は、十二月に期限が来るトヨタの融資と密接に絡んでいる」と言うのは愛知県建設部幹部。

 銀行団が撤退したため、蒲開にとってトヨタ以外に事業資金の借入先はありません。三百五十一億円に上るトヨタからの融資は今年十二月、返済期限を迎えます。

 県建設部幹部は「増資により蒲開の債務超過を圧縮することで再建計画をつくり、融資が継続できるかどうか(トヨタに)判断してもらう」と語り、今回の増資は、蒲開に対するトヨタの債権を担保するためであったことをうかがわせます。

 トヨタは「当社はラグーナの運営主体ではないので、お答えすることはありません」としていますが、当の蒲開も「トヨタは(トヨタの)株主から、債務超過の会社(蒲開)に融資を継続することへの理解が得られない。株主代表訴訟を起こされる可能性さえある」とトヨタの立場を代弁。二〇〇二年の段階で「増資して債務超過を解消するのが(蒲開の出資者間で)合意になっていた」と強調します。

計画は不透明

 日本共産党の林のぶとし前愛知県議は「今回の増資の直接の理由は、年末に返済期限が迫ったトヨタ融資の返済資金調達のため」と指摘。蒲開の運営について「増資後のトヨタへの返済計画や今後の事業・財政計画が公表されていません。県と蒲郡市は税金や公有地を使う以上、事業計画を明らかにし県民に検討を仰ぐべきです。自治体がリゾート開発に出資する必要性、第三セクターのあり方が問われています」と言います。


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