2006年6月12日(月)「しんぶん赤旗」

追及 米軍再編

沖縄の負担 どこが軽減

米軍基地 自衛隊の共同使用計画


 在日米軍再編の一環として沖縄の米空軍嘉手納基地と米海兵隊キャンプ・ハンセンを自衛隊が共同使用する計画に、基地周辺の自治体が一斉に反対の声を上げています。その背景を探りました。(田中一郎)


爆音 今でも最悪なのに

嘉手納基地

 重低音のごう音が響きます。嘉手納基地から戦闘機が離陸した瞬間、体が抑えつけられるような圧迫感です。

 六日、同基地で実施された緊急事態想定の即応訓練では、午前零時からサイレンが響きわたり、午前六時から午後五時までに一〇〇デシベル(電車通過時の線路わきに相当)を超える戦闘機の爆音が三十六回も発生しました。一日の一〇〇デシベル超の爆音発生回数では、嘉手納町が測定を始めた二〇〇〇年以降で最多。役場には、住民から「まるで戦場のようだ」などの苦情が寄せられました。

 日米両政府の在日米軍再編「最終報告」(五月一日)には、同基地で航空自衛隊が米軍と共同訓練を行うことが盛り込まれました。訓練内容として想定されているのは「戦闘訓練、捜索救難、輸送訓練等」(北原巌男防衛施設庁長官)です。

 狙いは「自衛隊及び米軍の間の相互運用性を促進し、それにより、全体的な同盟の能力を強化する」(昨年十月の在日米軍再編「中間報告」)こと、つまり両軍の一体化と戦闘能力の強化です。

 嘉手納町の基地担当者は、今も爆音や事故の危険に苦しめられていることをあげ、「さらに自衛隊まで受け入れるわけにはいかない」と強調します。

 一方、「最終報告」には、同基地の戦闘機の一部訓練を本土に移転させる計画も盛り込まれました。しかし政府は、年間七万回にも達する離着陸回数がどれだけ減るのかを「示すのは難しい」(北原長官)としています。政府のいう「負担軽減」の保証はありません。

 周辺の住民の思いも同じです。この間の米軍による横暴勝手な振るまいが、その思いをいっそう強めています。

 たとえば事故―。同基地では、二〇〇五年度の米軍機の事故・緊急着陸は五十七件(嘉手納町調べ)。週に一回は起きている計算です。五月二日にも、F15戦闘機が着陸時に車輪が出ず、滑走路わきの芝生に突っ込む事故がありました。

 ところが同基地のペオリ広報局長は、抗議に来た嘉手納町議会の代表に「一九七〇年代から、F15は(民間地での)事故らしい事故は一件しかない」と開き直りました。

 また、沖縄市によると、昨年十一月―今年五月の深夜・早朝の離着陸は百九十三回にも上ります。東門美津子市長が地元紙のインタビューで米軍機の深夜・早朝の飛行を非難したのに対し、ペオリ局長は「早朝離陸は過去数カ月間で一度だけ」と“反論”書を送付(五月十七日)。これに反論しようとする市側の担当者に対し、多忙を理由に面会を拒否しました。

 嘉手納町議会の田仲康栄・基地対策特別委員長(日本共産党)は「訓練移転は、嘉手納の訓練を全国に拡大することにしかならない。空自まで共同使用することになれば、爆音被害はさらに増幅され、基地機能は強化される。それは受け入れられないというのが議会の方針だ」と語ります。


山を焼き 住宅地に銃弾

キャンプ・ハンセン

 キャンプ・ハンセンでは陸上自衛隊の訓練が計画されています。「最終報告」は「施設整備を必要としない共同使用は、2006年から可能」と、早ければ今年から実施し、将来は自衛隊施設まで建設する方針を示唆しています。

 陸自は、イラクを想定した市街戦訓練を沖縄の海兵隊とともにグアムなどで実施しています。ハンセンでも、こうした訓練が繰り広げられる危険があります。

 「ハンセンは現在も実弾演習、戦闘訓練、ヘリによる離発着及び旋回訓練等が昼夜を問わず行われており、米軍演習は過密状態。(自衛隊の共同使用は)明らかに負担増であり、到底受入れできるものではない」

 ハンセンを抱える金武町、宜野座村、恩納村の三町村が那覇防衛施設局などに提出した要請文(五月十五日)です。三町村はキャンプ・シュワブ沿岸部に海兵隊新基地を建設する計画は容認していますが、ハンセンの共同使用には反対しています。

 ハンセン周辺では午前五時ごろから演習の射撃音が響き、住宅地に銃弾が飛び込む事故も繰り返されてきました。昨年四月には、米軍の不発弾による山火事が発生し、民間地にわずか約二百メートルまで火の手が迫りました。

 今年五月には、ハンセン内の都市型戦闘(市街戦)訓練施設付近から「家が揺れるほど」(五十二歳の女性)の激しい爆発音が周辺の住宅地域を襲いました。

 金武町に住む男性(68)=農業=は「自衛隊がきたら、さらに訓練が多くなる。山も焼ける。弾も飛んでくる。反対だ」と話します。

 金武町にある専門学校の学院長(72)も言います。「自衛隊は(沖縄戦で住民に銃を向けた)旧日本軍のイメージもある。その自衛隊がきて日米の軍事一体化が進めば、憲法改悪と連動して海外で日本が戦争ができるようになってしまう。もう我慢できない」


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