2006年6月10日(土)「しんぶん赤旗」
主張
米軍機騒音被害
苦情を敵視するとは何事か
米軍嘉手納基地(沖縄県沖縄市、嘉手納町など)の戦闘機爆音被害が激増しています。とくに深夜・早朝の爆音は一刻も放置できません。
沖縄市の東門美津子市長が「騒音防止協定にある深夜・早朝の飛行禁止は守られていない」と批判したことに、嘉手納基地は「市の情報源は信用できない」との広報局長名の文書を沖縄市に送ってきました。苦痛を与えている米軍が住民の怒りの声を代表した市長の発言を敵視するなど言語道断です。米軍再編を背景に特権意識をむきだしにしたものであり、見過ごしにはできません。
安眠妨害どこ吹く風
嘉手納基地は「早朝離陸は過去数カ月間で一度だけ」といっています。これほど騒音被害の実態を無視した話はありません。
沖縄市が嘉手納基地周辺で実施している航空機騒音測定結果は、米軍機が深夜・早朝(午後十時から午前六時)の飛行をくりかえしていることを証明しています。
米軍再編の「中間報告」後の昨年十一月から今年五月二十三日までの半年間でも、騒々しい事務所内・電話のベルに相当する七一―八〇デシベルが五十一回、地下鉄の車内の音・ピアノ音に相当する八一―九〇デシベルが十一回です。「過去数カ月」でも三月七回、四月四回、五月六回です。百三十一回もの七〇デシベル以下の騒音も静かな深夜・早朝のなかでは安眠を妨害します。
「耳栓をしなければ眠ることすらできない」との住民の訴えは深刻です。米軍がこの苦痛を無視し、「早朝離陸は一度だけ」というのは横暴の極みというべきです。
一九九六年の日米合同委員会が合意した「嘉手納飛行場における航空機騒音規制措置」(航空機騒音防止協定)が米軍の横暴を許す原因ともなっています。
「航空機騒音防止協定」はざる法の典型です。深夜・早朝の飛行を、「米国の運用上の所要のために必要と考えられるものに制限」としています。これは米軍が必要とする深夜・早朝の飛行を認めるものです。
嘉手納基地は、沖縄市に送った文書で、ハワイまで十時間かかるため日のあるうちに着くには沖縄を早朝に離陸する必要があると強弁しています。「日中の方が夜間より安全」だというのが理由です。米軍機の運用が優先で沖縄県民の生活はどうでもいいという態度です。こんな言い分を許していては騒音被害がなくならないのも当然です。
政府は、深夜・早朝の米軍機騒音の実態をつきつけられても、協定は「守られている」(河相外務省北米局長 六月六日)、「運用上必要なもの」(二〇〇五年二月 町村外相=当時)といい、米軍の横暴を助長する姿勢に終始しています。
米軍機の本土での飛行訓練によって騒音被害を少なくするといっても、騒音防止協定の見直しもおこなわず、アメリカいいなりの姿勢に固執するのでは、とうてい不可能です。
基地撤去の原点で
米軍再編は、日本をアメリカの先制攻撃戦争の恒久的な足場に変えるものです。米空軍も、「地球的規模で迅速、同時に何千もの目標を攻撃する能力」をめざしています。在日米空軍の飛行訓練も増え、騒音被害が激化するのは必至です。米軍再編が「基地のない平和な沖縄づくり」の新たな障害物となるのは明白です。
県民要求の原点である基地撤去の実現をめざすことこそ、県民の安全と世界の平和に貢献する道です。