2006年6月6日(火)「しんぶん赤旗」

核兵器違法化 空想的ではない

大量破壊兵器委が提言


 世界の有識者十四人からなる「大量破壊兵器委員会」(ブリクス委員長)が一日に発表した報告書「恐怖の兵器―核・生物・化学兵器からの世界の解放」は、すべての核保有国に対し、「核兵器に依拠しない安全保障の立案を開始し、核兵器違法化の準備を始めるべきだ」と提言しています。

 ブッシュ米政権が核使用政策を推進し、二〇〇五年の核不拡散条約(NPT)や国連首脳会議などで核兵器をめぐる国際交渉が停滞しているもと、この提言が核廃絶に向けた国際世論を活性化する一つの契機となることが期待されています。

■米の政策批判

 報告は本文が約二百ページ。米ロ英仏中の五カ国に核兵器が広がった「核拡散の第一の波」、イスラエル、インド、パキスタンに及ぶ「核拡散の第二の波」に続き、現在はイラク、リビア、北朝鮮、イランを対象とする「核拡散の第三の波」が襲っていると指摘しています。「一部の国の核は脅威ではないが他の諸国の核保有は危険だ」といった考え方を拒否するとしています。

 報告は、「大量破壊兵器による攻撃が不確実で差し迫っていない場合」にも核兵器による先制攻撃をするとの米国の〇二年以降の新核政策について、「現実の核戦争遂行」の可能性を拡大し、「核兵器使用の敷居を低くする危険」をはらむと批判。今日の米国などの核政策は「米ソ冷戦期よりも核兵器の使用を拡大するものだ」と指摘しています。

 このような認識に立って報告は、「今こそ、化学・生物兵器を違法化したように核兵器を違法化すべき時だ」とし、「核兵器違法化は空想的な目標だという考え方を一掃する」ことが重要だ、「核軍縮条約は達成可能だ」と呼びかけています。

■具体策を検討

 報告は、核使用を抑えるさまざまな具体的措置についても詳しく検討しています。▽自国の安全保障への懸念を抱く北朝鮮やイランに対し、軍事介入や転覆活動による「政権交代」をしない保証を与える▽一九六八年の安保理決議二五五や九五年の同決議九八四などに基づき、核保有国は非核保有国を核攻撃しないとの法的拘束力をもった保証をする―ことなどを勧告しています。

 報告は、軍縮交渉全体が停滞している現状に警鐘を鳴らし、意味のある軍縮交渉復活のために軍縮、不拡散問題などについての世界サミットを開催することを提案しています。

 ブリクス委員長(国連監視検証査察委員会=UNMOVIC=前委員長)は報告前文で、米国の〇二年と〇六年の「国家安全保障戦略」が掲げる先制核攻撃戦略は国連憲章の自衛権の規定から「はずれている」と指摘。包括的核実験禁止条約(CTBT)などの核軍縮措置を進める上で「米国が決定的影響力をもっている」としています。(坂口明)


 大量破壊兵器委員会 スウェーデン政府の提唱で設置され、2004年1月に第1回会合を開催。ダナパラ元国連事務次長(軍縮担当)、ベイレス・ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)所長、エバンズ国際危機グループ(ICG)議長・前オーストラリア外相、ペリー元米国防長官、西原正・前防衛大学校長らが参加しました。


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