2006年6月1日(木)「しんぶん赤旗」

曹洞宗の懺謝文とは?


 〈問い〉 過去の戦争協力を反省した曹洞宗(そうとうしゅう)の「懺謝文(さんじゃもん)」とは?(大阪・一読者)

 〈答え〉 曹洞宗の「懺謝文」は1992年11月20日に発表されました。「懺謝文」を発表するにいたった経過を、この「懺謝文」の文中で次のように述べています。

 「曹洞宗が一九八〇年に出版した『曹洞宗海外開教伝道史』が、過去の過ちに対して反省を欠いたまま発刊され、しかも同書の本文中において過去の過ちを肯定したのみならず、時には美化し賛嘆して表現し、被害を受けたアジア地域の人々の痛みになんら配慮するところがなかった。かかる出版が歴史を語る形で、しかも過去の亡霊のごとき、そして近代日本の汚辱ともいうべき皇国史観を肯定するような視点で執筆し出版したことを恥と感じる」

 日本で最大級の伝統仏教教団が戦争責任の表明にあたって、明確に「皇国史観」と表現し、「近代日本の汚辱」と規定したことは歴史的な出来事です。

 「懺謝文」は続けて「また同時に、このような書籍の出版が太平洋戦争後三十五年を経てなされたということについても、重大な罪の意識を感じざるをえない。何故ならばそれは、宗門が明治以降、ある時は国家に阿諛(あゆ)迎合し、ある時は積極的に国策に荷担して戦争協力を行い、アジアの民衆に塗炭の苦しみを強いてきたという事実について、なんら反省することもなく、その責任すら感じていなかったということに他ならない」と懺悔(ざんげ)を深め、『曹洞宗海外開教伝道史』を回収して廃棄処分にすることにした、としています。

 「懺謝文」は最後に「われわれは重ねて誓う。二度と同じ過ちを犯さない、と。そして、過去の日本の圧政に苦しんだアジアの人々に深く謝罪し、権力に組みして加害者の側に立って開教にのぞんだ曹洞宗の過ちを深く謝罪するものである」と、しめくくっています。

 この立場は、イラク戦争反対声明(2003年2月28日)にも、はっきりと打ち出されています。また、曹洞宗の「平成16年度・布教教化に関する告諭」という宗教活動の基本方針でも「殺すことなかれ 殺させることなかれ ……この願楽(がんぎょう)を実践することこそが、私たちの信仰生活にほかなりません」としています。(平)

 〔2006・6・1(木)〕


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