2006年6月1日(木)「しんぶん赤旗」

まるで占領下の政府

沖縄の心(チムククル)まで売れぬ

米軍再編閣議決定


 政府は五月三十日、在日米軍再編についての日米合意を「着実に実施していく」方針を閣議決定しました。沖縄のキャンプ・シュワブ沿岸部(名護市)への米海兵隊の新基地建設を強行する構えです。沖縄では怒りが強まっています。


 「まるでアメリカ占領下の政府のようだ。V字形滑走路を持つ怪物のような基地をつくるために、ジュゴンのすむ美しい海、自然環境も壊す。言語道断だ」

怒り

 名護市辺野古の住民でつくる「命を守る会」の金城祐治代表(70)は、怒りを込めます。

 名護市で酒屋を営む男性(61)も「住民の話をきくなら、また話は別だが、政府が勝手にやるのは、押しつけだ」。

 閣議決定翌日の地元紙は「政府の姿勢は極めて強権的であり、県民無視と言わざるを得ない」(琉球新報)「日米首脳会談(六月)に向けて体裁を整えただけではないか」(沖縄タイムス)と一斉に、批判の社説を掲げました。

 もともとシュワブ沿岸部への新基地建設には、世論調査でも県民の七割が「容認できない」。地元の名護市では、86%が反対です。政府は、県民の総意を完全に無視しました。

損失

 沖縄県漁連と県漁協組合長会は「県下漁業を守る立場から、基地建設に反対する」とした決議をあげました(十日)。決議は、沿岸部を広大に埋め立てる計画になっていることをあげ、「サンゴ礁、藻場、産卵場、稚魚育成場等を失うことによる漁業の損失は甚大」と批判しています。

 シュワブがある名護市東海岸十三区の区長会の田畑一茂会長は、住宅地上空を米軍機が飛行することによる爆音被害が心配です。十三区は、防衛庁に振興策の充実を要請していますが、「絶対反対は絶対反対。これは変わらない。われわれにとって、軍自体が迷惑施設だ」と強調します。

 名護市に隣接する宜野座村の城間盛春議長は、同村の受け入れ表明後も反対の立場です。

 「沖縄には、こちらから『どうぞ』といって渡した基地は一つもない。同意して基地がつくられれば、沖縄の歴史で初めてのこと。恥ずかしいことだ。閣議決定されても、チムククル(心)までは売れない」

遺憾

 政府が強行した閣議決定には、沖縄県や名護市も反対しています。

 稲嶺恵一知事は、在日米軍再編の「最終報告」(一日)を受け、シュワブに「暫定ヘリポート」を建設する構想を打ちだし、「政府案を基本」に協議を進めることで、防衛庁と合意しました。しかし、この合意には県民の批判が強く、県民の世論調査で「評価する」は36%にすぎません。

 県民世論を受け、稲嶺知事は閣議決定に対し、「極めて遺憾だ」とするコメントを発表。閣議決定が設けるとした県や関係自治体との協議機関について、牧野浩隆副知事は「政府案を前提とする協議機関には対応するつもりはない」と表明しました。

 新基地建設計画を容認している島袋吉和市長も、閣議決定には「納得のいくものではない」と批判しています。

岐路

 建設計画に抗議して那覇市で開かれた緊急県民大会(二十五日、主催・基地の県内移設に反対する県民会議)。雨の中、約千二百人の県民が参加しました。

 「一人でも多い県民が反対していることを伝えたい」と思って参加した女性(50)=那覇市=は、四人の子どもの母親です。「沖縄に、イラクの子どもたちを殺しにいく基地ができるかと思うと、母として、いたたまれない」

 県内の有識者でつくる「十五人委員会」の宮里政玄代表(琉球大学元教授)は、こうした集会では初めて壇上に立ち、訴えました。

 「沖縄は今、戦後六十年の重みに匹敵する岐路に立っている。たしかに県民は弱者だが、弱者にも力はある。それは世論だ」


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